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「たいまつ」のことば

 先程、NHKスペシャルにむのたけじ氏が出演、コメントを寄せていた。御歳94。
眼光鋭く、滔々と反戦論を展開。日本一マニアックな反骨ジャーナリストだろう。
 彼は、戦争中に朝日新聞社に入社して中国、東南アジア特派員となるが、敗戦を
機に戦争責任を感じ、自主退社。以後、郷里の秋田で「たいまつ」という新聞を自費
出版。一貫して反戦を唱え、農業・地域を取り上げ続けた。
 私が学生時代、マスコミ関係の仕事に憧れたのは彼の影響が往々にしてあったし、
現在、こうして農業にかかわっているのはやっぱり彼の影響だったのかもしれない。
 そんなむの氏の「たいまつ」に連載された言葉達を集めた本。『詞集 たいまつ』
 一見、よくありがちな“ありがたや名言集”のようだが、よく読み込むと本人の活きた
経験から出てきた感が強く、一味違う。

    コメがゆたかにみのることを願う人は多い。コメをつくる人がゆたかに
   なることを願う人は少ない。あまりに少ない。

 
 この言葉は、内(農家)と外(国民)両方に問いかけているようで、色んな意味で
リアル…。田舎に浸かった者であるからこその言。

    日本人の精神の振り子は、おおむね〈法要〉と〈おみこし〉のあいだを
   往復している。つまり、実在していないものをダシにして悲しげにさわ
   ぐか、実在していないものをダシにしてうれしげにさわぐか、いずれそ
   のようにしてにぎやかにしているときは生きている気がするという振幅
   である。精神が自立していないのである。


 これも痛烈で、見透かされた上、自分に突っかかってくる感じ。

 但し、全編を通じて厳しさに覆われている。常に権力と闘ってきた所以だろう。
 たまに首を傾げたくなるような言葉もある。それもこれも、にんげん所以。
 “癒し”を求める今の時代にはちょっと重すぎるか?しかし私は好きだ。
by ut9atbun61 | 2011-02-27 23:05 | | Comments(0)

ブルーベリーの管理

 ようやく雪が解けて、急に忙しくなってきた。
 毎年1~2月にかけてやる事を半月で終わらせなければならないから。
昨日から、ブルーベリーの剪定に取り掛かる。ほどほどに花芽を残しつつ、
古い枝を込み合っている部分から剪定していく。これが結構難しい。センス
というか、要領がよくないとダメ。そして剪定した大きめの枝は、4月の挿し
木用に取っておく。
 今から7,8年前に新米普及員と一緒に、ブルーベリーの剪定や挿し木を
探り探り取り組み始めた。以来、一向に上達する事無し。毎年気分・雰囲気・
我流のいい加減さ。けれどそれなりに実が出来るところが植物の偉大さなのか。
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 1年間延び放題の枝葉。Before.
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 剪定した後の様子。After.(同じ樹ではないが)
プロが見たら、ただやみくもに切っただけだと思われそう。

 後は挿し木の枝を取って、鶏ふんを追肥に敷きわらを施す。本来、鶏ふんは
樹木の追肥に向かないと言われているが、たまたま農園では通じない。大丈夫、
大丈夫と言い聞かせる。
 今年も甘いブルーベリーが実る事を祈りつつ。
by ut9atbun61 | 2011-02-24 22:26 | 農業(有機) | Comments(0)

たまたま通信 ~鶏肋~

 先週、卵を産まなくなった鶏を6羽さばいた。手伝って下さったのは、隣町の鶏
さばき名人。一緒に来たWWOOFのイギリス青年も、臭いに苦しみながら参加。
 鶏にしろ、イノシシにしろ、動物はおしなべて、さばき方というのがある。私もここ
に住みついて、随分色々な動物をさばいてきたが、中々その奥義を掴むことは易
くない。今回の鶏も、我流に包丁を振り回せば1羽当たり20分近くかかる。首を
切って毛をむしるところからだと、約40分仕事だ。
 ところが、名人の仕事っぷりには驚かされた。
 まず包丁は殆ど使わない。関節部分の筋を切れば、あとは全て手で剥いでいく。
いとも簡単に、10分とかからない。しかも、きれいに仕上がる。モモやササミの身
離れもいい。全ての作業が2時間足らずで完了。写真を撮る暇も無く、、、。

 この時期になると、私達の様な小規模養鶏業にとって、卵の産みが悪くなった鶏
(いわゆる廃鶏)の処分が、課題に上る。
 食肉として卸すことは法律上出来ないし、業者に引き取ってもらうにはコストが生
じる。山に野放しすれば…、今の御時勢何が起こるか分からないので出来ない。最
近は地元の宴会で実演提供(?)したり、友達数人と一緒にさばいて分け合ったりす
るぐらい。

 中国の三国志時代に「鶏肋」という故事がある。

曹操が劉備によって漢中を奪われ、さらに劉備が漢中王を名乗ったことに怒り、漢中を奪還すべく彼自ら軍を率い出陣した。しかし、魏は蜀に敗れ、曹操も矢が歯に当たるという危険な目に遭った。この時点で魏の軍内部で「撤退論」が取りざたされたが曹操はこれを否定してきた。
その中、曹操が夕食中に鶏がらを噛みながら「鶏肋…」と呟いていたところを配下の楊修が居合わせ、この「鶏肋」とは漢中のことだと思い、曹操が内心「捨てるには惜しいが・・・」と撤退を考えていると合点して、軍を引き払う準備をした。これを知った曹操は激怒した。楊修にとっては主君の意を汲みしたことが、主君の内心を探ると逆鱗に触れたのである。曹操は楊修を処刑したものの、劉備に再び敗れた曹操は楊修の言葉を思い起こし、撤退を決断すると、楊修の遺体を丁重に葬ったとされる。
(ウィキペディアより) 

 食べるには身がないが、ダシが取れるのでそのまま捨てるには惜しいことから、「大し
て役に立たないが、捨てるには惜しいもの」
という意。鶏のあばらを指しての表現であ
るが、廃鶏丸ごとに置き換えてもいいと思う。さすがに“大して役に立たない”とは失礼だが。

 その「鶏肋」をたっぷり使ってだしをとり、セロリとささみのスープを作った。
 やっぱり役立たずではない。塩と手を組めば、調味料なんか目じゃない!
 




 
by ut9atbun61 | 2011-02-22 22:11 | たまたま通信(養鶏) | Comments(3)

有機農業講演会

 久しぶりの有機農業講演会。お隣り吉賀町まで足を運んだ。
 途中、柿ノ木のオーガニックレストラン「Aja(アヤ)」に立ち寄った。
玄米・魚・菜食と体に優しい3連発だったのだが、玄米トラウマ持ちの私にも美味しく
頂けた。おそらく木の温もりを感じさせる店構えと、野菜の素材を最大限に活かされ
たおかず達が迎えてくれたせいもあるだろう。おすすめのお店。

 メインの講演会は、土佐自然塾の山下一穂氏による「未来社会の安全保障」
有機農業技術論から社会改革論まで大風呂敷の感もあったが、“畑丸ごと堆肥化”
論は良かった。畑に生えた雑草や緑肥を土に鋤き込んで土を作っていくというやり方。
土への負担が少なく、肥料バランスも良く、何よりもかんたん。
 今まで自分が取り組んできたのは、一生懸命肥料を作る事。鶏糞を運び、落ち葉と
雑草を集めて、もみ殻やヌカなどと混ぜ合わせる。これが結構面倒臭くて、つい中途
半端になりがち。分量も見当で加えるので、結局は腐ったり、未熟になり思うような土
作りが出来なかった。一つの方法としてこれからやってみようと思う。
 また自然農や有機農に陥りやすいがちがちの考えに縛られず、F1種やビニールマ
ルチを利用して柔軟性がある。自分なりのやり易い方法で実践しながらこだわりを見
つけていく…肩肘張らない有機農業に将来を見出しているようであった。

 今年は、山下先生の言うようににもっと目を向けてみようと思う。
by ut9atbun61 | 2011-02-19 23:17 | 農業(有機) | Comments(0)

岡山 視察研修

一昨日、昨日と農業青年クラブで視察研修に岡山へ出掛けた。
一応のテーマは、水あめ。昨年、米だけで水あめを作る遊びをやって、皆が乗
り気になったため。その勉強にと普及センターが選んでくれた。
 研修先は、里山農場。水あめキットとして販売をしており、UIターンで有機農業
にも取り組んでいるため、私にとっては好都合。
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 里山農場の山崎さんは同世代ながら、米・野菜の宅配(約100軒)からせんべい等
加工品まで様々な事に取り組まれている。補助金にも頼らず、自力で施設・機械を購
入し、人まで雇う。たまたま農園とは大違い。夢も農業界で“松下幸之助”の様な変革
者になりたいと言う、NHKのプロフェッショナルに出てきてもおかしくない人。
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スケールが大きくて私自身の経営の参考には余りならなかったものの、やれば出来る
という可能性と、時機を見ての決断力は、私の弱点克服に役立ちそうだ。

 夜は久しぶりのネオンにまみれて、ビートルズなどを熱唱して午前様。
 おまけに朝早くから、ホテルの大きな窓から岡山駅の朝模様を拝めて幸せ一杯!
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 翌日は、眠い目をこすりこすり、近隣の道の駅や産直市場を見て回った。
by ut9atbun61 | 2011-02-17 21:20 | 田舎 | Comments(0)

スプーンギター

 3日前、隣町の知人宅にお邪魔した。そこで研修している外国人が、ウクレレを弾く
ということでお誘いがあった。私はそれを聞いて、久々に生の英会話が出来、音楽交
流が出来ると踏んで楽しみに出掛けた。
 その研修生(名前は忘れたが)は、イギリス生まれの21歳。WWOOF(ウーフ)と
いってお金のやりとりなしで、「食事・宿泊場所」と「力」そして「知識・経験」を交換する
というシステムを利用してやってきたそうだ。世界中を旅して回っているが、日本がお
気に入り。足長の長身で二枚目、びっくりするほど顔が小さい。
 
 早速“交流、交流”と思い、英語で挑みかかった。が、しかし、頭で質問しても全く言
葉が出てこない。中途半端な英語学習と10年前1カ月間のアメリカ旅行レベルでは
しどろもどろのすってんてん。結局、知人のおっさんに通訳の助けを借りる始末。

 それでは“音楽で挽回”とウクレレ演奏をやってくれと偉そうに言うと、彼は「まだ3年
程だから…」照れ臭そうに弾き始めた。
“…、…、上手過ぎる!”
長い左指が、しなやかに、流れるように。ロックからクラッシックまで、つっかかることな
く披露してくれた。何かアドバイスでも出来ればと考えていた、片や10年選手の自称ギ
タリストは、穴があったら入りたい思いで耳を潤した。

 別れ際に、彼が面白いよと紹介してくれた映像。南アフリカの羊飼いらしいのだが、
曲もスタイルもとにかく格好いい。



 話は変わって、先月、同じIターン仲間の友人宅でソーセージとパン作りのパーティーを
しました。その時の様子が“ひつじ色な日々”というブログで見る事が出来ます。
彼女は徹底した行動派ナチュラリストなので、興味のある方は覗いて見て下さい。
by ut9atbun61 | 2011-02-13 21:34 | 音楽 | Comments(0)

農業で人間をつまみ食い?

 私がここにやって来た時、最初に仲良くしてくれた農業仲間がいる。彼は農業では
一年先輩。同じIターンで同い年、波長も合う仲だった。よく家に遊びに来ては、将来
の事や有機農業について話した。
 彼はビニールハウスを借りて、施設野菜に取り組んだ。とにかく几帳面、研究熱心。
いつも綺麗に管理して、収穫高も年々上昇。近所の人たちも「彼はやるで」と太鼓判。
私のいい加減で乱雑な性格がいつもやり玉に挙がっては比較される始末。私自身、
見習わねばとひそかに思っていた。
 しかし、ある時を境に彼の姿が見えなくなる。色々と些細な事が悪い方向へと傾いた
のか、真相は分からない。家に行ったり手紙を書いても音沙汰無し。
 丁度、御両親も移住してきた頃で、随分心配されたに違いない。

 その御両親と、昨日久しぶりに出会った。様子を伺うと、最近、時々外に出ては農作
業を手伝ってくれているそうだ。会話も少しずつ増えているという。
 よかった、よかった。が、今からが大事。ゆっくり、あせらず、である。またいつか、色
々と話す時が来てくれるだろう。今度は一緒に何かやっていく、実践の場にしたい。
 
 昨年、一冊の本に出会った。「畑で野菜をつまみ食い」(ふきのとう書房)
谷川俊太郎、小室等と魅力ある人が筆を振るっている。その中に一人聞き慣れない名
前が。小宮山天経(てんけい)さん。彼は、ギター一本抱えて長野の山の中
へ飛び込んで、有機農業に取り組んでいるという。自分と重なる部分が多い上、この人
は詩人だ!と直感して急に会ってみたくなった(たまに変な気を起こす事があるもので)。
 そこで更に調べを進めると、驚いたことに彼は、一旦ドロップアウトしてまた現在、一か
ら出直しているという。彼もどうやら、手抜きしない自分に厳しい性格だったのだろう。

 一生懸命頑張る人が立ち行かなくなる…単に自身のせいだけじゃないような気がしま
す。かといって社会・国が悪いなんて格好つけた事も言いたくないが、社会システム的
な欠陥があるのでは?例えば、勝ち組の高笑いとか…。
 こういう御時勢、決して良いとは言えないが、意外と私の様な「あいつは駄目だ」と言
われつつ、のらりくらりそれを聞き流して適当にやる部分が少しはあった方がいいの
かもしれません。トルストイの「イワンのバカ」の様に。

 天経さんの事は統合失調症への挑戦というブログで知ることが出来ます。
by ut9atbun61 | 2011-02-11 23:42 | 田舎 | Comments(0)

偶成の時間

 私は、一日の内で好きな時間というのがある。
一つは、朝。早くても遅くても関係なく、冬場など余裕がある日の寝起き。
食卓に一人、座ってぼーっとする時。その時に熱くて濃いお茶梅干があれば最高。
(このお茶と梅干。お前はじじいかと笑われそうだが、実は小学生の頃から朝の習慣に
なっていて、これがないと朝を迎えた気にならない。)

家の前の雪化粧を見ながら、雨音を聞きながら、春の緑風を薫りながら。
 頭は空っぽ、何にも考えない。但し、いつまでもそうやっていると、子供らやかみさん
が割り込んできて現実に引き戻してしまう。元々夜型人間のため、単に睡眠不足のせ
いというのが家族の言。

 もう一つは夜。皆が寝静まった後の時間。地球上で自分だけの世界だと勘違い出来
るひととき。この時は忙しい。勿論、ぼーっともしなければならないし、物思い・考え事も
必須。曲や詞が出てくればギターを抱え(しかしなるべく音を出さないように)、溜まった
本の読み潰しもあるし、たまにテレビやネットから情報をくすねる。
 そうして充足満足納得すれば、今度は寝床への入場行進曲が必要。
 夜一番合うのは、高田渡でもなくビートルズでもなく加川良さんの歌。メロディーも歌
詞も秀逸で、ある時は心を解きほぐす、またある時は力をみなぎらせてくれる。
 「親愛なるQに捧ぐ」の「偶成」という曲は、独りでしんみり聴くといい。

 こういういい歌を聴くと寝床に入るのが勿体なくなり、それから色んなCDを出してきては
深夜放送が始まる。当然夜は更けていく。
 そして翌朝は、緑茶と…。こんなこと出来るのも今の内だろう。
 春がやって来ると、加川良も吹っ飛んでしまう。朝は早くから外に出て、夜はくたくたで夢
うつつ状態になる。
 それが“私の”自然の摂理なのだろう。
by ut9atbun61 | 2011-02-06 23:16 | 音楽 | Comments(0)

たまたま通信~家畜保健所~

 昨日家畜保健所から連絡があり、「申し訳ないが、再度立ち入り調査を行いたい」との
事。どうやら、各地で鳥インフルエンザが発症しており(主として野鳥の感染)、国が防疫
を徹底するようにとお達しがあったそうだ。
 我が農園でも昨年末より、小さな隙間を塞いだり、逆性せっけんを使用した長靴消毒を
こまめに行っている。
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(殺菌性が高い逆性せっけんとホームセンターで購入した手動ポンプの消毒噴霧器)

 そして今日、立ち入り調査。頭を掻きながら、「ほんと何度もご迷惑かけてすみません。
これも仕事なもので。」とやってきた。そして「防鳥網の破れや隙間を確認します」。
「……、大丈夫なようですね。」ろくにチェックも無く終了した。その間5分足らず。
 というのも、下記の状況では鳥が入るどころではないだろう。何処に入口があるか分
からず人間が辿り着くのさえ一苦労する。
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 鶏舎は北向きの山の陰。解け始めの雪が全てを呑み込む。暫くの間、雪が完璧な鳥
インフル対策をやってくれる。
 ただ今後から、ポリ箱に消毒液を入れての踏み込み消毒や、鶏小屋へ出入りする際
の服装を限定するなど一層厳しくなってきた。
 矢張り原因が特定されていないがために、対策も絞りこめていない上、不安ばかりが
増幅しているのが現状であろう。現場の者は大変だ。
 まだ春は遠からじ…。
 
 
by ut9atbun61 | 2011-02-03 21:41 | たまたま通信(養鶏) | Comments(2)

葉桜と魔笛

太宰治が石見の浜田を舞台にした小説があるということで、友人が送ってくれた。
「新樹の言葉」の本に収められている「葉桜と魔笛」という10ページほどの超短編。

 ある日、死の床にいる妹に手紙が届く。それはふられたはずの人からで、『実は
まだ想いを寄せている。これから毎日、家の前で口笛を吹いてあげる』というもの
だが、これは不憫に思った姉が書いたもの。しかしこの手紙自体、妹の自作自演
だったのだが…、
「そのとき、ああ、聞えるのです。低く幽(かす)かに、でも、たしかに、軍艦マアチの
口笛でございます。妹も、耳をすましました。ああ、時計を見ると六時なのです。
私たち、言い知れぬ恐怖に、強く強く抱き合ったまま、身じろぎもせず、そのお庭
の葉桜の奥から聞えて来る不思議なマアチに耳をすまして居りました。」

 その笛の主は、恋さえ許さぬ厳格だった父ではないかと思うところで終わる。

 何か含みを持たせた結末が深さを感じなかったものの、何ともいえない切なさ
と不気味な感じが好い。
 この「新樹の言葉」(全15編)は、全編を通して静かで、落ち着きのある文体。
激しさ・狂気というものが余り感じられないので、さらっと読めた。 

 どうやらこれを書いた頃というのが、麻薬中毒と度重なる自殺未遂から立ち直る
中期というので頷けた。表題の「新樹の言葉」などは、希望に満ちていて心地良い。
大体、故郷津軽が出てくると、文体が活き活きしてくる様な気がする。
ただし、太宰特有の自己否定や言い訳の前置きが所々に散りばめてあり、かつて
の私だったら共感を持って受け入れたが、今読むといただけない。もっとストレート
に云ってくれ、と突っ込みたくなる。自分が成長したせいか、はたまた考える事をし
なくなったのせいか、定かではないが。
 最近の太宰ブームは、若い女性に人気があるそうだ。確かに、「火の鳥」「誰も
知らぬ」
を読むと、女性の繊細な感覚や表現がとても上手い。内面の葛藤をさりげ
なく美しく魅せるところが凄いのだろう。 

 ただやっぱり個人的な好みを言えば、晩年の「トカトントン」「親友交歓」とい
ったブラックジョーク的なマニアック作品だ。
by ut9atbun61 | 2011-02-01 22:15 | | Comments(0)