カテゴリ:田舎( 252 )

刷り込み合戦 ~長男編~

車に乗ってエンジンをかける。すると、スピーカーから今時の流行り歌。
気取り声に陳腐な歌詞、ガチャガチャと演奏。私にとってはもはや騒音。
ラジオでも聴こうかと思う先に、助手席から手が伸びてきた。
手際良く嫁のCDが取り出され、私のUSBが差し込まれる。
乾いたギターの音に言葉が絡まっていく…。
12歳になる長男が一言。「やっぱ、これだな。」

私の中では甘ちゃん子ども、と思ってたが、どっこいそうでもなかった。

「突然どうしたん?」と取りあえず聞く私に、
「えっ、母さんが聴く曲つまらないからね。」

さらりと言う。マイノリティー派としては、ちょっと嬉しくなって
「文はどんな音楽が好きなんか?」

「わしはね、やっぱり泉谷しげるが1番かな。なぎら健壱もすごくいい。
お父さんのすきな高田渡や加川良なんかも結構いけるね。」

偉そうな態度に吹き出しそうになりながら大人の音楽談義が展開される。
フォークは歌詞と雰囲気がいいそうな。しかし、海を渡ったサザンロック
ブルース・カントリーなんかはよく分からないらしい。
では実地検分。シバを聴かせると「恰好いいね。」ディランⅡを流すと、
「これは余り良くない。」
次に三上寛をかけると、「これはやめて!ち
ょっと気持ち悪過ぎる」だって…。
ひとまず私と嫁の刷り込み歌合戦はどうやら私に軍配があがったようだ。


またテレビに関しても、好きな番組は、野球中継とドキュメント72時間、
落語ザムービーだとか(夜遅いからたまにしか観られないが)。
「母さんの見てるバラエティーやドラマには興味ない!」なんて嬉しい
事を言ってくれると思っていたら、外出した私がこそっと帰ってくると、
皆で楽しそうにバラエティーを観ている。私は一人寂しく別部屋へ引き
こもり。日頃より「あんなん観るんじゃない」と言ってゴールデン帯の
番組を制限し過ぎたかな…と反省しきり。
なのでこちらの軍配は嫁に上げざるを得ないか。

但しこれは長男の話。次男と長女は私の叫びは全く届いてないようす…。


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by ut9atbun61 | 2018-05-19 22:22 | 田舎 | Comments(0)

包丁研ぎ職人

先日、大学生が遊びに来た(というか手伝いに来てくれて)時の事。
「海さん家の包丁を研ぎましょうか?」
聞くと、親戚の叔父に研ぎ名人がいて、影響を受けハマっているそうだ。
元来、古風な雰囲気を持っていた子だから、言わずもがな。
早速、マイ研ぎ石をカバンから取り出し、既に臨戦態勢だ。
「おー、それじゃ頼むぞ!」
包丁3本手渡すと、彼の目付きが変わり、体を屈めて砥石を睨む。
シャッ、シャッ、とリズミカルな音が耳に飛び込んでくると、私はいつの間に
か幼い頃に戻っていた。
f0237818_22353805.jpg
私の祖母はアパートの大家さん。アパートというと聞こえはいいが、昭和期に
あって既に古臭く、ガタピシした長屋のようなものだった。なので住人達も変
わった人ばかり。ヤクザ、バーの女給さん、(昭和の)中年フリーター、精神疾
患者、生活困窮者。それでも皆、優しくて面白い人達だった。
(余談だったけどこの時の暮らしが私の精神性を作ってくれたと確信している。)
そんなアパートに、数か月に1回、包丁研ぎのおっちゃんがやって来る。
歪んだ自転車をギィギィいわせながら、くわえタバコの胡麻塩頭。荷台に沢山
の袋をぶら下げて。うちのアパートの前に自転車を止め、袋から様々な砥石を
出して並べて、水を汲んでくる。そうしていると…、(どうやって人が集まっ
てきたかは覚えてないが)おばちゃんたちが包丁を持って集まってくる。
そしておっちゃんは、包丁を一つづつ研ぎ始める。シャッ、シャッ…。
心地良い一定のリズムで手を前後していく。くすんでいた包丁も、瞬く間にピ
カピカに!新聞紙で切れ味を確かめるように、斜めに刃を振り下し、完成!
おばちゃんらは、さも当たり前にそれを受け取りお金を払う。おっちゃんも黙
って受け取る。そこにほとんど会話はなかった(と思う)。私を含め近所の子供
数人は、場の雰囲気に飲み込まれながらも、おー、と小声で囁きながらじっと
その様子を見つめる。研ぎ屋のおっちゃんは時折、私たちを見てニヤッと笑う
(話したという記憶もない)。私たちにとっておっちゃんは最高にカッコイイ
憧れの人だった。
夜、家に帰って母親に包丁研ぎの話を羨ましげに言うと、母親はキッとなって、
「あのおじさんはね、昔良くないことをしてね、警察に捕まったとよ。それで
何の仕事も無くて仕方なく包丁を研いで貧乏な生活しとるんよ。だけんあんた
は、ちゃんと勉強してちゃんとした仕事につかな、いけんよ。」
今思えばひどい言い方だが、そう言われても私にとって今でも眩しい人である。
「海さん、終わりましたよ。」
額に汗をにじませ、彼が笑顔で振り返る。そして、やはり新聞紙を手に包丁を
入れる。
「こうすると更に切れ味が増すんですよ。」
成程そういう事だったのか…。「ありがとな!」
万能包丁と称して、鶏の骨から小枝まで切り尽くしたボロボロの包丁が、今目
の前で、光っている。本当に切れるようになったかな?と軽く刃先に指を添え
てみた。スッと冷たい感覚が走り、指の腹から赤いものが滲んできた。
ああ、包丁研ぎ職人にようやく再会した! と嬉しさもこみ上げてきた。

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by ut9atbun61 | 2018-03-30 22:55 | 田舎 | Comments(0)

谷迫組覚書

おらが集落には“組”というのが4つある。
近所付合いする上での最小単位とでも言おうか。
更に、おらが組は谷迫組といって(谷が迫っているところだからか)現在4軒。
その組長を今年度やり終えた。ほっと一安心と、先週庚申様という組長交代の儀を
やった。平たく言えば、組内で飲み食いして話をする会だ。
その会で、『谷迫組覚帳』というノートが話題に。
昭和43年より組に関する覚書をしている貴重な文書だ。
確かそんなものあったなと思い、その夜、組長セットから引っ張り出してみた。
茶色く日焼けしたB5ノート。辛うじてばらけてないのは先人達の怨念なのか。
昭和43年当時は、9軒住んでいた様子。藏之進だの勘七だの血気盛ってそうな名
前が居並ぶ。大体当時の書き留めた内容は葬儀と会計報告。おそらく葬儀は一大イ
ベントだったに違いない。最近まで存命だった大工棟梁が書いた心得があった。
                             (一部抜粋)
“葬儀に於ける気の付ける点”…買い物は婦人を主体に 良く聞き 相談する事
             …受付はまじっくは不可 墨が良い
             …壺堀りの食事の件 風呂を沸かして置く
             …黒豆を撒く習慣あり
と何とも雰囲気たっぷり!気の荒いおっさんらが、葬儀では動揺して婦人衆に頼っ
てるだろう姿が微笑ましい。また壺掘りというのは、おそらく土葬の事であろう。
また当時の会計記録を見てると、何とまあ酒の字が多い事多い事!
 谷迫道路修理 ○○氏より酒1本
 道草刈り   ××氏よりビール5本
 分道の橋補修 人夫誰々… 焼酎1升 1級酒
 道路修理   ▽△氏より2級酒2本
酒の分類と誰から貰ったかは事細かだ。この時代の日当は酒が一番なのだろう。 
そして昭和61年からぷつりと記録が途絶え、時代は変わり平成14年。
何と私がちゃんと記述しているではないか! すっかり忘れていた。
私が尊敬していた無農薬独りぼっち農業をやっていたじいちゃんが亡くなった時だ。
この方は強く土葬を希望されていたので、集落で久しぶりの土葬をした。
私は墓掘り(壺掘り)を名乗り出て、他3名と一緒に掘った。清々しい汗をかいた。
(これは覚えてないが)どうやら人生初の葬儀委員長まで務めさせて頂いたようで、
ちゃんと記されてある。有難や。
しかし、残念ながらそれ以降は数年に1回、その年にあった出来事が簡単に書き留
めてあるだけで、ノートが寂しくなっている。
こうした記録は集落の歴史であり、文化につながるんだ…。
そこに今夜、私はしっかり書き込んでいく。

 平成29年4月~30年3月まで 谷迫組組長 田中海太郎
野峠堤大改修も無事終わり、本年度より……。……このノートもずっと続いていっ
て欲しい! 未来の人が見返してくれる事を望んで‼

             

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by ut9atbun61 | 2018-03-19 23:37 | 田舎 | Comments(0)

谷迫組覚書

おらが集落には“組”というのが4つある。
近所付合いする上での最小単位とでも言おうか。
更に、おらが組は谷迫組といって(谷が迫っているところだからか)現在4軒。
その組長を今年度やり終えた。ほっと一安心と、先週庚申様という組長交代の儀を
やった。平たく言えば、組内で飲み食いして話をする会だ。
その会で、『谷迫組覚帳』というノートが話題に。
昭和43年より組に関する覚書をしている貴重な文書だ。
確かそんなものあったなと思い、その夜、組長セットから引っ張り出してみた。
茶色く日焼けしたB5ノート。辛うじてばらけてないのは先人達の怨念なのか。
昭和43年当時は、9軒住んでいた様子。藏之進だの勘七だの血気盛ってそうな名
前が居並ぶ。大体当時の書き留めた内容は葬儀と会計報告。おそらく葬儀は一大イ
ベントだったに違いない。最近まで存命だった大工棟梁が書いた心得があった。
                             (一部抜粋)
“葬儀に於ける気の付ける点”…買い物は婦人を主体に 良く聞き 相談する事
             …受付はまじっくは不可 墨が良い
             …壺堀りの食事の件 風呂を沸かして置く
             …黒豆を撒く習慣あり
と何とも雰囲気たっぷり!気の荒いおっさんらが、葬儀では動揺して婦人衆に頼っ
てるだろう姿が微笑ましい。また壺掘りというのは、おそらく土葬の事であろう。
また当時の会計記録を見てると、何とまあ酒の字が多い事多い事!
 谷迫道路修理 ○○氏より酒1本
 道草刈り   ××氏よりビール5本
 分道の橋補修 人夫誰々… 焼酎1升 1級酒
 道路修理   ▽△氏より2級酒2本
酒の分類と誰から貰ったかは事細かだ。この時代の日当は酒が一番なのだろう。 
そして昭和61年からぷつりと記録が途絶え、時代は変わり平成14年。
何と私がちゃんと記述しているではないか! すっかり忘れていた。
私が尊敬していた無農薬独りぼっち農業をやっていたじいちゃんが亡くなった時だ。
この方は強く土葬を希望されていたので、集落で久しぶりの土葬をした。
私は墓掘り(壺掘り)を名乗り出て、他3名と一緒に掘った。清々しい汗をかいた。
(これは覚えてないが)どうやら人生初の葬儀委員長まで務めさせて頂いたようで、
ちゃんと記されてある。有難や。
しかし、残念ながらそれ以降は数年に1回、その年にあった出来事が簡単に書き留
めてあるだけで、ノートが寂しくなっている。
こうした記録は集落の歴史であり、文化につながるんだ…。
そこに今夜、私はしっかり書き込んでいく。

 平成29年4月~30年3月まで 谷迫組組長 田中海太郎
野峠堤大改修も無事終わり、本年度より……。……このノートもずっと続いていっ
て欲しい! 未来の人が見返してくれる事を望んで‼

             

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by ut9atbun61 | 2018-03-19 23:37 | 田舎 | Comments(0)

U氏の憂鬱

Kai-phoneというやつを手に入れた。 流行りのI-phoneではないらしい。
何やら特殊な最新型とか。
薄汚れたぺらっぺらな取扱説明書を手に取る。
 
 この度はお買い上げ有難うございます。この機種は……、
(おっと、長ったらしい説明は後回しで次は、っと)
※使用上の注意
①本機はドコモ回線を利用した格安携帯です。またお客様の契約は全て楽天モバイ
ルを通しております。なので、auと違いどこも電波が入ってしまう隙の無さ、楽天
的になれない操作方法、そんな心配はKai-phoneには御無用。余り気にされること
なくマイペースでご利用ください。
②本機は衝撃に強く、また防水性に優れておりますが、完璧というわけではありま
せん。自然に勝るものは無しの如く、大自然を前にしては、電源を切りましょう。
農作業中に使うなどとはもってのほかです!
③本機は節電機能として、すぐに低電力状態に入ります。お客様、思い起こして下
さいませ。7年前の3.11以降、人の命は電力より軽いと身に染みた日を!それを思
うと、携帯なんか持ってる場合ではないでしょうが!
今も故郷に帰れぬ人が悲しみ、甲状腺がん疑いの子供達が苦しみ、使用済み燃料が
ネズミ算的に増え、それにぶら下がっている人たちだけが喜んでいる。それなのに
あなた方はのうのうとして‼ あっ、すみません。説明書としたことが取り乱して
しまい…、もとい、低電力とはいえ、無駄な電気です。せめて寝る時はシャットダ
ウンしましょう。
④この度ご契約いただきましたプランは、『オトクケチケチプラン』です。5分間
は全ての通話が無料になります。しかし5分を過ぎると、料金が発生します。
言ってみればこれが私どもの稼ぎどころで、携帯会社が潤っている訳です。情報社
会の行きつく先は私どもとしても心配ではありますが、さしあたって儲かればいい。
その罠に陥りたくなかったら、是非5分で電話を切って下さい。友達関係にヒビ?
そんな心配は無用です。お客様がただ一言発すればいいだけです。「あっ、電波が
☆▽○…!」か「ごめん、キャッチが入った!」「やばい、家が火事だー‼」
時と場合で上手に使い分けて下さい。
⑤Kai-phoneご利用のお客様には縁のない事ですが、念のため掲載しておきます。
どうせ機械音痴の極致でしょうから、LINEやAppliなどといった横文字には顔を突
っ込まないように。無知のまま入り込むのが一番危険です。万が一、乗っ取りやウ
ィルス感染に遭った場合は、落ち着いて対処せずに、すぐさま粉々に叩き付けてや
りましょう。そうすれば心もすっきり、今まで時間を奪ってきた奴とおさらばでき
ますよ。そうして人間らしい生活を取り戻そうではありませんか!

なんだこりゃ!宗教か?共産党か? 取説でもなんでもないんじゃねぇか。
もう続きを読むのもばかばかしくなってきた。
確かに怪しいとおもってたんだよな。某家電量販店の一角で契約をしたはいいが、
店員が片言しか話せない中国人男性だったし。ちょっとものを尋ねると、「スミ
マセン、チョットマテクダサイネ。」と申し訳なさげにどこかに電話する有様。
他会社の店員達はクスクス笑っているし。凄くいい人だったが、大丈夫だろうか?
ため息をついて、何気なく表紙に目が戻った。

 はじめに
この度は、Kai-phoneお買い上げ有難うございます。この機種は、今まで携帯電
話を頑なに拒み、長年スマホを敵視し続けたU氏がご利用されるにあたって、彼
の取扱方法を分かりやすく説明したものです。
これさえあればU氏なんか簡単に騙………。

って事は、Kai-phone の Kaiってひょっとしたら?!


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by ut9atbun61 | 2018-03-07 23:36 | 田舎 | Comments(0)

挙句の果てに  ~其の弐

ここは地方M市。或る自動ドアの前に立った。今から異次元の世界へ飛び
込む。緊張が高まっていく。大袈裟?そんな言葉もあるだろうが、私にと
っては小宇宙空間。気を整え、思い切って一歩、足を踏み入れる。
開扉と共にあるのは、白を基調とした壁、矢鱈と眩しい白の室内灯、それ
に加えモワッとした電子臭。その先に若人の声が電波の如く響いてきた。
「いらっしゃいませ!お待ちのお客様、こちらへどうぞ。」
別に待ってねぇよ。それに気後れする事無く、指定された席に座る。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
取りあえずの笑顔に促されて、口を開いた。
「えっと、先日携帯を無くして…、~で今回解約しようと思いまして。」
店員の顔が、一瞬曇ったのを私は見逃さなかった。
「あの、今解約しますと、違約金というものがかかりまして、……」
色々とコムズカシイ話を出してくる。よし、こっちは上から被しちゃえ。
「ああ、大体わかってますよ。でもひとまず必要なくなりましたから。」
「そうしますと、今お使いの番号が使えなくなります。そうでなければ、
利用一時休止という方法もございますが。」

「いや、休止じゃなくていいです。(小声で)どうせ維持費みたいなのがか
かるらしいし。別にどっかの電話に乗り換えるって訳でもないですから。
auさんは自宅で電波が入らなかったから、丁度良かったですよ。()
嫌味とでも思ったのだろうか、店員はニコリともせず、淡々と答える。

「そうですか、では~、ここにサインして下さい。」

「今月を持ちまして、携帯電話の契約を終了させて頂きます。ご利用頂
き誠にありがとうございました。」

私が、やれやれと立ち上がって背を向けた直後に、最後の言葉が飛んだ。

「次回契約をされる際も、是非ともAUをご利用下さい!」

ゆっくりと大股で自動扉を跨ぎ、これで現実世界に戻ってきた。
外気が何だか清々しい。凄く身体が軽くなった気分。ポケットに忍ばせて
いた腫物をもう触らなくてもよいという安心感、私に未知なる交信を強要
してきた赤い小悪魔とも、完全におさらば出来るという開放感。
シャバに出るとはこのような心持であるのだろうか!
いずれはまた、彼女らに面倒を看てもらう日が来るかもしれない。
明日なのか、はたまた2年後なのか、それともこの世とおさらばした後か?
それは神のみぞ知る、ってか。

追記
先日、早速友人が親切にも見合い話を持ってきてくれた。
「おい、最近安くて便利なスマホがあるから早く持てや!」
うんうん、と聴いておいたが、何が良いいのか分からない。
私自身、“携帯交際マニュアル”でも勉強しないと相手に失礼だ。
取り合えずは、前向きに検討していこう。


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by ut9atbun61 | 2018-02-05 23:12 | 田舎 | Comments(0)

挙句の果てに  ~其の壱

かれこれ2年程は付き合ったであろうか? 昨年末、突如、彼女が私の前から姿を
消した。まぁ、どうせいつものように、ふざけてかくれんぼか、放ったらかしです
ねてるに違いない。そうたかを括る私の読みは、今思うに随分浅はかだった。

そもそも、最近の人間とケータイの恋愛事情はかなり際どい所まで来ている。
「死ぬまで一緒にいようね!」なんていう甘い言葉でもかけあっているのか、四六
時中見つめあっている異形カップルを良く電車の中で見かける。
また夫婦・親子関係に於いても、それぞれのケータイが取り持っているという新し
い家族形態が生まれている。そうなれば、もう周りは何も見えない。
彼女といちゃいちゃしてて事故を起こしたトラックドライバー、現代社会の歪み
に抗してか、彼女と共に部屋に立て籠もった若者達、枚挙にいとまがない…。

今年に入って、私もさすがに彼女の事が心配になって、嫁に恐る恐る聞いたのだ
が、怖い顔で知らぬ存ぜぬ、の一点張り。確かに聞く相手を間違えた。と今度は、
auとかいう彼女の親元に出向いて行方を尋ねたのだが、「あんたのそば(約5k
範囲内だとさ!)に彼女はいるはずだ」と白を切る始末。どうせ、私が彼女につ
れなくしてきたのを根に持った対応だろうと、私は早々に諦めた。

考えてみれば、彼女も私のような人間と出会って不幸だったかもしれない。
元々、彼女とは一方的なお見合いみたいなものだった。
周囲が「もういい歳なんだから、突っ張ってないでそろそろ持つものを持て」と。
私も満更ではなく、相手方に乗り込んでいったのだが、先方では私が余りにも我
がままばかり言うんで、呆れ半ば強引に押し付けてきたのが彼女だった。
当時からかなりの年増で、細面にけばけばしい赤い服、まさに昭和の残り香を振
りまいていた。それでも初めて見る私は、随分と眩しく映ったものだ。

それから新生活が始まった。私もようやく一丁前になった心持で、嬉しくもあり、
あちこちで彼女の自慢をするのだが、周りは引き気味。それでも私も彼女もそん
な傍目を気にせず、先の長くないな幸せを過ごしていた。
ところが、暮らし方が変わるというのは恐ろしいものである。私が彼女を得てか
らというもの、彼女がいつも付きまとって横で騒ぎ立てる。初めはお茶目だと笑
っていたが、段々煩わしくなってくる。中でも、会議や講演会といった静寂を要
する処でも彼女はお構いなし。幾度となく周囲から氷水を浴びせかけられた!
更には、まったく与り知らぬ情報を押し付けたり、見知らぬ男の話なんぞをする
始末。挙句の果てには、月千円程小遣いをあげてたのが、翌年から足らぬと言っ
て2千円要求し始めた。これは詐欺同然である。
到頭、自分の前で、彼女というブロックがゆっくり崩れていった。

以来、私は彼女を邪険に扱いだした。あちこちに連れて行かない、無視する、off  
にして存在を否定する、時には手を上げる事も…。彼女の痛々しい姿を見かねて、
友人も忠告してくれるが、私は決して聞き入れなかった。
ちょうど姿を消したのは、そんな時だった。
そして今日、私はある決断を下す事にした。              ~つづく~


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by ut9atbun61 | 2018-01-30 23:51 | 田舎 | Comments(0)

「世界同時革命」と「田舎からの国づくり」

「世の中を変える」って事は、特定の人が変えるんじゃない、そして特別な事を
する訳でもない、ただ自身が真摯に暮らしに向き合う事だけ、そう2人の師から
私は教わった。それは自省と悟りだった。
その2人が今月、相次いで亡くなった。元赤軍派議長の塩見孝也氏と有機農業の
“天才”こと山下一穂氏だ。
お二方に共通するものは、優しさとパトリオティズム(愛郷心)。
片や闘争と獄中を経て自省のパトリ、片や農から世界を俯瞰する悟りのパトリ。
余りにも突然、まだ気持ちの整理はできてない、てか、整理なんかできない。
ここは失った悲しみより、出会った有難さを噛みしめたい。
後日、改めて本ブログで追悼辞を記したい。

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by ut9atbun61 | 2017-11-28 21:20 | 田舎 | Comments(0)

不思議な村の不思議な力

昨日、昼休み時に電話が鳴る。受話器の奥からはいつものだみ声。
「昼から、1時間ばかし、ちぃーとてご(手伝い)してくれんかのう」
でました、いつもの手! 天気良いから、このまま調子良く農作業を続けたかった
んだが…、「あー、ハイハイ。」と考えるより先に返事が口からこぼれていた。

13時。事務所に向かうとやはり居た居た。
隣の集落の大工に、左官、山師に…。お揃いの面々、おっさんに捕まり苦笑い。
さーて今日のボランティア活動は…、研修生新居の車庫作り、だそうな。
大工がぼやく。「チェーンソー研ぎを借りに来たらちょっと手伝えだと。」
それに山師が続く。「ちょっと研修生宅を見に来いと言われただけなんじゃが。」
“ちょっとちょっと詐欺”蔓延中。そこにまた新たな犠牲者が通りかかる。
町からたまたま上がってきた元大工、よせばいいのを車を止めて話しかける。
「皆お揃いで何しかね?」
「おーちょうどええところに来た。ちょっとてごせぇ!」
そのままインパクトとビスを押し付けられ、「わしは別の用事があるんじゃ…。」
と泣き言を言いながら屋根に上がる。
こうして、しかめっ面の面々も30分も経てば、職人の真剣顔に早変わり。
「ここはもう少し長めに切った方が後々細工しやすくなるで!」とか、
「ちょっと待ておっさん!こねぇなだらずをしたらいけん!こうするんじゃ。」
段々熱を帯びて、我が事のように活き活きとし出す。
私ももはや1時間ではきかなくなってしまった。まあこれも、いつもの事。

そうして陽が赤く染まり始める頃、いささかくたびれた面々は、すがすがしい顔
してビールを飲む。「はー、今日も捕まって昼からは仕事にならんかったわ!」
「そいでも、ええ仕事が出来たな。おっさんにはかなわんな(笑)。」

“嫌よ嫌よも好きなうち” この不思議な魔力こそ、田舎に必要な物かもしれない。
でもあんまり効き過ぎるのもどうかと思うけど…。
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by ut9atbun61 | 2017-11-15 22:59 | 田舎 | Comments(0)

30周年に水を差す

大大盛況だったおくがの村30周年。早速そいつに水を差す気はさらさらないが、
思うところがあった。
翌朝、数人で後片づけをした。200人弱も集まれば宴会もわや。強者たちの足跡
は大変なものだった。タプタプんの水っぱらアルコール達が散乱し、色彩豊かな
オードブルの残党共が溢れかえっている。その横で大鍋のおでんの海原には大根
と卵らが所狭しと泳ぎ回っている始末。
これを見ると日本、いや世界の未来は暗いな…と悲観せざるを得ない。
余りに残飲食物が多過ぎる。こんな事が毎日どこかで行われているだろう。
確かに15時開催で、ざっくり200人分の飲み放題&オードブルを注文したから、
その結果である。これでもスタッフ達で5人前ずつは持って帰ったんだが…。
事前の打ち合わせで、オードブルか折弁当か、かなり議論をしたのだが、結局
鶴の一声でオードブルになった。全ては私らのミス。まずは食べ物に申し訳ない。

ただ、出席した大物の方々へも恐れず言うと、出来れば参加者という意識を大切
にして欲しい。「勿体無いからなるべく食べてやろう」とか「残るんであれば、
まぁ家族へ持って帰ってやるか」なんて事を考えて欲しい。また私も酔ってしま
うと、調子に乗って次々にビール栓を開けてしまうのだが、それにも注意しなけ
ればいけない。何か楽しい飲み会が貧乏臭いものになってしまうが、これも慣れ
だと思う。
こんな事言ってたらまたおっさんに怒られそう。
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by ut9atbun61 | 2017-11-01 21:09 | 田舎 | Comments(0)