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カテゴリ:田舎( 260 )

亡羊の嘆

最近、とうとう奴が言う事を聞かなくなってきた。
外出中は、公衆の手前もあって多少仕事をしてくれるのだが、自宅に戻ると
うんともすんとも言わずふてくされている。こっちが本気で怒ると、慌てて
過去の話を持ってくる。おかげで私の友人知人からは大ヒンシュク。
もう奴と耳寄せ合って4、5年、指で撫で始めてから2年になろうかというのに。
昭和を背負った私は鉄拳制裁で根性を叩き直してやろうかと思ったりしたのだ
が、友人から忠告された。
「それは止めた方がいい。昔はそれでよかっただろうが、今の時代そんな事し
たら逆効果、それより病院に行った方がいいよ。」
それならと、素直に従ったのだが、山口、小野田とたらい回しされた挙句、広
島か電話での治療を求められた。ちょっと、それは無いよ、三木谷さんよ!
考えてみれば、元々折り合いの悪かった仲で、私はいつも奴を批判していた。
「恥も外聞も無く所構わず声出してんじゃねぇよ。それにオレらを手玉に取って、
日本人を骨抜きにしやがって!自分無しでは生きていけないと思ってんだろうが、
そりゃ大間違いだ、オレは要らないよ。」
そう強がっていたのだが…いつの間にか奴はピタリと寄り添うように。
そうなると私も満更でもなく、いつも一緒に行動するようになった。
サイズ違いの鉄ちゃんの服を無理矢理着せて、これ見よがしに…。
今そのしっぺ返しが来たって事か?
しかし、最近奴と一緒に行動しなくなって、思う。
静かな日常が帰って来た。凄く肩の荷が下りた様な気がする(元来私は対声恐怖
症だから)。奴がそばに居ると、いつの間にか必ず奴の期待に沿おうとしていた。
居ないなら居ないでいいんだなと。

ってな訳でしばらく携帯が使えなさそう、ひょっとしたらやめるかも、という
お話でした。

by ut9atbun61 | 2019-08-11 23:33 | 田舎 | Comments(0)

お笑いパン

人を笑顔にする食べ物というのはよくある。
しかし、吹き出してしまうほど笑わせてくれるパンはそうそうない。

今日、納屋の入口にパンが置いてあった。おそらくおやつであろう。
『ブランのスイートチョコ蒸しケーキ』ナチュラルローソン製とある。
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確かローソンはハイクオリティブランド商品を売りにしていたっけ?
「なるほど。普段から私がチクチク言うから、無添加っぽいおやつを
チョイスしてくれたって訳か。ほら、ちゃんと"人工甘味料不使用"と
書いてあるし、おまけに糖質9.1g、ロカボを謳っている。やっぱり
時代が変わって来たんだな」なんて鼻歌交じりで勢いよく袋を破る。
濃厚なチョコの香りが鼻をくすぐり、早速口へ運ぶ。
しっとりした食感に優しい味わい。「流石はナチュラルローソン…」
と何気なく袋裏面に目が行く。えっ?下枠の半分以上の大量の原材料名。
しかも怪しげな名前が並ぶ、イソマルトデキストリン、グリセリンエス
テル、グリシン、ラカンカ(羅漢果ではない)。またちょっとヤバめの
お馴染み添加物、異性化液糖、加工デンプン、ソルビット、酢酸Na。
そして謳い文句"人工じゃないよ、天然だよ"甘味料ステビア入り!
では肝心のブランふすまとベルギーチョコは?というと、随分下位に入
っているではないか(原材料名の順位は入っている分量順だとか)。
途中から可笑しくなり過ぎて、更には蒸しパンの水分奪取と相まって、
喉に詰まらせ、危うく死ぬかと思った!
こんな芸当が出来るパン屋さんはこの世に一つしかないはず!
一番下の製造者を見ると……やっぱり、世界のパンだ‼
今日はおいしい面白いパンをごちそう様でした。



by ut9atbun61 | 2019-05-30 22:52 | 田舎 | Comments(0)

招かざる客

一昨日、久々の雨でホッと一息。横田のギブミーベジタブルに遊びに行く。
入場料を野菜で支払って、その野菜を料理人たちが美味しい料理に仕上
げて提供してくれるという素敵なイベント

そこで見かけたのが"ハンドマッサージ"。
齢40過ぎてから疲れやすくなったのか、最近マッサージに惹かれる様になった。
家でも子供達に10分100円というレートで足つぼマッサージをお願いしていた
のだが、ここんとこ社会情勢の煽りを受けて、200円、300円と高騰していき、
とうとう「お金も要らないからしたくない!」と言われ出したところだった。
そんな事情もあり、優しそうなお姉さんに、手のツボを押してもらおうと思い、
いそいそとブースへ。結構な人気で客足が絶えず、しばらく待ってからだ。
「では次の方どうぞ」と椅子を勧められる。聞くとツボ押しではなくエステ?
ちょっと違うなと怯みつつ、お姉さんに「男性の方もいらっしゃいますよ。」
と言われ、ひとまず腰を下ろす。まず、酸素マスクのようなものを装着させら
れる。何でも水素か何かでリラックス効果があるという。未だ口の中で主張す
る野菜餃子のニラ臭をも優しく包み込んでくれるだろうか?
ひたすら吸って吐き、吸って吐く。次の人の事なんか考えてない…。
「では始めます。」と笑顔を前にして、私は一応お断りを入れる。
「あのー、さっきまで農作業してたもんで、手が汚いんですが、いいですか?」
普段から手を殆ど洗わないよ、なんて言えないから"さっきまで"を強調。
「大丈夫ですよ、初めに綺麗に拭きますから。」
滅菌室(?)から、綺麗な手拭きタオルを取り出し、私の手を丁寧に拭き始めた。
すぐに純白のタオルがチョコに染まっていく。流石の私もあっ、と声を漏らす。
彼女は顔色一つ変えず、「大丈夫です。」と言う(本当かな?)。
手拭きで6割ほど汚れが落ちた。まだ手のシワの溝にはくっきりとした汚れが…
それからいい匂いのハンドオイル(?)を塗っていく。手際よく、手全体をしごく
ようにマッサージをしてくれるのだが、申し訳ない。私は普段から、堅木のツボ
押しでグリグリとこねくり回しているから、全く効いた感じがしない。
10分程手をいじってもらい、「終わりましたよ。」
「有難う、汚すだけ汚してすみませんでしたね、」「いえいえ、またどうぞ!」
嫌な顔一つせず、汚れ百姓の相手をしてくれて感謝感謝。ブースを後にした。
改めて、いい匂いのするベタベタした掌を開いてみる。見事、汚れが全て落ちて
綺麗になっていた!
後で次男から、「お父さんの手いい匂いでキレイ。」と言われた。
普段の手を知っている者の魂の叫び、エステシャンに届いたかな?


by ut9atbun61 | 2019-05-19 22:54 | 田舎 | Comments(0)

高校選び

島根に移住して18年が経つのだが、実は更に遡る事約10年前、15歳の春に
初めて島根を訪れている。(少し長い文章です)

当時、久留米で地味な中学時代を送っていた私。
2年生の春、突然母親に「島根に愛真高校という面白い学校があるから
ちょっと見に行こうか。」と言われた。
私は汽車旅が出来る事から二つ返事で了承したものの、母は進学してくれる
ものと思い込んだのか、いつの間にか学校から内申書を受け取った。
当時の担任は、ひょうきんな爺ちゃん先生で、電話口で、
「今日、息子さんに内申書を内申書を渡したとですが、うっかり書き間違え
たとですよ。ま、変なこつは書いとらんけん、ご安心下さい。ハッハッハッ!」
何かイヤーな気がした事を覚えている。

博多駅から急行『さんべ』に乗って山陰本線を進んで、江津まで。
駅からタクシーで造成したての丘を登っていき、高台にある愛真高校へ。

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小ぎれいな校舎に辿り着いたら、ちょうど昼休みらしく、生徒達の騒ぎ声が聞こえる。
誰かが私たち訪問者に気付き、ワイワイ言いながら窓から一斉にこちらを眺める。個
性豊かないでたちの生徒達。えっ、高校なのに私服?そして金髪の子が窓から落ちん
とばかりに体を乗り出している。
この光景にすっかり怖気づいた私。久留米も十分に派手なヤンキーはいたから、金髪
に驚いた訳ではない。徹底した管理教育の久留米と比べ、自由な空気を子供ながらに
嗅ぎ取って、それが怖かったんだと思う。
更に(初代)校長先生と会った。母親がひとしきり自己アピールをして(勿論私は全然
喋らなかった)、校長先生が内申書を見て、「ほー、これは素晴らしい。オール5じゃ
ないですか!しかも生徒会長として大きな中学校をまとめていたなんて!是非うちの
学校に来てほしいですね。来年、簡単な試験をするだけで面接するまでもないですな!」
なんて言われた日にゃ、宮沢賢治ばりにオロオロするしかない。それ以降は、上の空で
殆ど覚えてない。
ただその日の宿は、寅さんに出てくるようなひなびた温泉宿に泊まった(多分温泉津)。
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そして九州に帰ってから、愛真高校に行く行かないの親子喧嘩が勃発するのであった…。
結果的には、佐賀の私立高校に通う事になる訳だが、もし島根の愛真高校に通っていたら、
どうなっていたろうか?と思う。

明後日三重県の愛農学園の先生が津和野に来る。愛真と愛農は姉妹校、そこに私は自分の
息子を入れたいと強く望んでいる……因果応報ってか?


by ut9atbun61 | 2018-11-05 22:46 | 田舎 | Comments(0)

ドック顛末記

4年に1度のオリンピックに対抗心を燃やしている訳ではないのだが。ただ単に
忘れて思い出したのがこのスパン。
4年前、人生初の人間ドックを受けた(更に遡る事4年、健康診断をしたっけ)。
その時、ゲップをして造影剤&バリウムを3杯飲んだ嫌な記憶が甦ってくる。
なので今年も恐る恐るJAの健康診断カーに乗り込んだ。
それが哀しみの始まりだった。

まず腹部エコー検査で。「あぁ、ポリープがありますね。」
と突然告げられた。「はぁ?」と私の驚きに、技師(?)は更にたたみかける。
「4年前にあったのがちょっと増えていますね。」
「いやいや、そんな話聞いてないですよ!」と私は語気を強めたが、
「4年前の結果では要経過観察と出てますよ。結果報告受けたでしょ。」
と涼しい顔をして言う。そんな診断見てないけど…、そんな…。
全身から力が抜けていく。
「しかし大丈夫です。大きさは2㎜程で、おそらく問題はないでしょう。
いぼみたいなもんですから、年に1回健康診断受けて経過を見て下さい。」
そんなんで安心できる訳がない。

凹んだ状態で、医師の診断へ。かなりのおじいちゃん、不安が募る。
勿論、最初にポリープの話を軽く喰らってジャブ。それから検査記録で、
「え、これはまずいんじゃないかな?」と医師が独り言。
 ??? ドキッとさせられる。
「4年前に54キロあった体重が、49キロ。これは問題だねぇ。」
なんだ、その話か。少しホッとして、
「あ、先生、それは大丈夫です。大体私は50キロ前後で推移してますから。」
「いやいや、これはやせ過ぎだよ。BMI値が低すぎる。」
「でも、体質なんですよ。体は軽いし、体調も良くていいですよ。」と返すも、
「痩せていると、栄養不足になり、免疫力が低下するし……。」
色々と挙げられると少し不安になる。確かに風邪ひきやすいしな。
「でも、なかなか太んないですが、どうすりゃいいですかね?」と聞くと、
「そりゃ、まずタンパク質を取る事だね。炭水化物も取って、ちゃんと肉魚を
食べなきゃ。」 私は思わず笑ってしまって、続けて返す。
「ご飯は1日5杯位食べてるし、肉魚も人より食べてますが、どうも太らない
んですよね。どうしたらいいでしょうかね?」
「確かに食べても太らない人もいるが、筋力をつける適度な運動も大切だから。」
(あの…朝から晩まで百姓仕事で鍛えてるんですけど…)と言いたかったがコン
ニャク問答になりそうでやめた。

そして、採血へ。意外と苦手。恥を忍んで告白すると、200cc献血で具合悪くな
った質。看護婦にその旨を伝え、「やっぱり個人差でしょうかね?」と尋ねると、
「いやいや、気の持ちようですよ!」とばっさりやられた。「貧血症だとか言っ
てますが、大体男性は弱いですね、女性は毎月血を見てるから平気ですがね。
20ccしか採らないので大丈夫です、さ、手を握って下さい!」
そういう意味じゃないんだけど…。何も言えず、かっこ悪くドックが終わった。

また途中、バリウム飲んで胃の検査を何とか乗り越えた後、下剤を飲む羽目に。
私はすぐ出るから大丈夫と断ったものの取り合ってくれない。
おかげで午後から大変だった。7~8回ほどトイレに駆け込み、百姓仕事に手が
つかない。更に体重が2キロ減ったのではないだろうか。
これだから、人間ドックは行きたくない。
また4年後にしようか、それとも経過観察のため来年も受けてみようか、今から
悩みどころだ。

by ut9atbun61 | 2018-10-31 22:28 | 田舎 | Comments(0)

追悼 マスター!

津和野の名物喫茶&バー『木の実』のマスターが今日未明に亡くなったという知ら
せを受けた。体調不良ではあったが、まさか…と言葉を失った。

マスターとは色々思い出深い。そもそも出会いが突飛だった。
ある日突然電話がかかってきて、
「木部に面白い人がいると聞いたから会いたい。」と。
そして現れた時は、何故か手にカメ。
何でも、道路を横切っていたから捕まえて土産にと思ったとか。
それから、音楽の話になって、サザンロックで盛り上がった。

その後、マスターが喫茶店をオープン、ちょくちょく顔を出しては話し込んだ。
音楽の話、政治の話、この町の将来について。毒舌が冴えまくっていた。
語るだけでは物足りず、時には喧嘩を売る事もしばしば。
お酒がそうさせているとの声も上がっていたが、私は本音を言っていると信じて
いた。決して間違ってはなかったし、口の悪さが故に正論がくすんでしまってい
ただけに過ぎない。そんなマスターが大好きだった。

またある時、友人とお店で飲んで、マスターの部屋に泊めてもらった事がある。
炬燵にごろ寝で、夜中3時頃、酒が醒めて、目も覚めた時に、運悪くマスターに
捕まり、朝まで津和野改造論に付き合わされた。翌日は眠くて仕事にならず。
今やとても良き思い出だ。

昨年は、隣町の民族派百姓と自称“左翼”である私のトークライブを開いてくれて、
マニアックに盛り上がった。それから会う度に、「また今度面白い企画をやって
くれよ!」と言われ続けていたところだった。私もそのうち、そのうち、と思っ
ているうちに今日の日を迎えてしまった。

こんなになるんだったら、町長でも立候補して、マスターとこの町を混沌とさせ
たかった!冗談を本物にしようというのが、マスターとの密約だった。

甚だ残念! まだ「ご冥福を」なんて祈りたくない!
ここら辺りを彷徨って、まだまだ毒舌を吐き散らして欲しいですよ、マスター!




by ut9atbun61 | 2018-10-25 23:29 | 田舎 | Comments(0)

夕暮れ partⅠ

私の大好きな高田渡の唄に「夕暮れ」(黒田三郎原詩)というのがある。
一度ライブでやってみたいものだが、雰囲気が出せずに言葉が空々しくな
るから出来ない。もう少し日常の年輪を重ねたら、ひょっとしたら…。

 夕暮れの街で 僕は見る 
 自分の場所からはみ出してしまった 多くの人々を
 夕暮れのビアホールで 一人一杯の
 ジョッキを前に 斜めに座る
 その目がこの世の誰とも 交わらない処を
 選ぶそうやってたかだか 30分か1時間
      (中略)
 たそがれがその日の夕暮れと 折り重なるほんのひととき
 そうやってたかだか 30分か1時間

都会の喧騒の中小さな日常をドンピシャ。たかだか世界が素晴らしい!

勿論詩人黒田三郎氏は鋭いのだけど、これを土臭く改編、唄い上げた渡氏
はもっと凄い。更にこれを現在の私の日常に重ねてしまおうと思った。

 男やもめの夕暮れタイム
 ひとまず鍬をうっちゃり 2匹に御機嫌伺い
 私は鎖に引かれて散歩と 犬がしゃれ込む
 いつもの道 いつもの畔 山に陽が隠れんぼ
 夕暮れが封切り それからお気に入りの場所へと
 熱い空の名残り 犬ははしゃぎ 私はボーッ
 涼しい夜風の予感 犬はそわそわ 私はボーッ

さぁ そろそろ帰ろうかな
 そうやってたかだか 10分か15

 野良と仕事の隙間に 入り込むほんのひととき

 そうやってたかだか 10分か15


忙しすぎる時の“たかだか”はくすんだ宝石のようだ。
と感傷に浸る余裕もなく鍬を草刈り機に持ち替えて、

暗闇がやって来るまで勝負に出掛けた。


 
 

by ut9atbun61 | 2018-08-06 23:07 | 田舎 | Comments(0)

人は何のために落ち葉を集めるのか

今日、息子たちを連れて落ち葉集めに出掛けた。用途は勿論畑の土作り。
日原に抜ける、山沿い“険道”の脇に埋もれる落ち葉を大量採取。
車なんぞは滅多に通らないから、2tトラックは横付け。
しかしそんな時に限って車の音。目をやるとクラウン系パトカーが向かってくる。
交わせるように慌ててトラックを移動して、やり過ごす。
長年の習性か(?)思わず身構える。そして手を止め、じっと見つめる。
パトカーはゆっくりと通り過ぎる。
窓越しのお巡りは会釈笑顔で通り過ぎる。中で2人で会話している様子。
「親子で落ち葉集めなんて随分昔の光景じゃないか、微笑ましいねぇ。」
おそらくそんなところだろう。子供2人を連れていれば…。

昨年末の落ち葉集めも、確かこの辺りだったが、少し違っていた。
一人で黙々と集めていると、「こんにちは!」と突然話しかけられた。
集中していて全く車に気が付かなかったらしい。顔を上げると、ミニパトに乗っ
た若いお巡り。笑顔でありながらも目は笑っていない。
「何をされているのですか?」
「何をって…ただ落ち葉を集めているだけですが。」
警戒感を持たれないように、こちらも負けずと作り笑い。
「地元の方ですか?」「いや、この近くだけど地元じゃないです。」
「お住まいはどこになります?」「この山を越えた木部ってところですよ。」
「何のために落ち葉を集めているのですか?」
オイオイ、落ち葉で爆弾作れるかっての!、ちょっとふざけてやろうか。
そう思ったが、お巡りは身を乗り出して、車から降りてきそうな勢いだ。
呆れながらも一応きちんと答える。
「何のためにって言われても…、これを畑に撒くんですよ。肥料になるんでね!」
「あ、そうなんですか……、…失礼しました…。」
随分腑に落ちないといった態で、名残惜しそうに(笑)去って行った。
こっちこそ、こんなすっきりしない職質は生まれて初めての経験だ。
やはり落ち葉集めは子供を使うに限る、つくづく感じさせられた一日だった。

by ut9atbun61 | 2018-06-17 22:21 | 田舎 | Comments(0)

刷り込み合戦 ~長男編~

車に乗ってエンジンをかける。すると、スピーカーから今時の流行り歌。
気取り声に陳腐な歌詞、ガチャガチャと演奏。私にとってはもはや騒音。
ラジオでも聴こうかと思う先に、助手席から手が伸びてきた。
手際良く嫁のCDが取り出され、私のUSBが差し込まれる。
乾いたギターの音に言葉が絡まっていく…。
12歳になる長男が一言。「やっぱ、これだな。」

私の中では甘ちゃん子ども、と思ってたが、どっこいそうでもなかった。

「突然どうしたん?」と取りあえず聞く私に、
「えっ、母さんが聴く曲つまらないからね。」

さらりと言う。マイノリティー派としては、ちょっと嬉しくなって
「文はどんな音楽が好きなんか?」

「わしはね、やっぱり泉谷しげるが1番かな。なぎら健壱もすごくいい。
お父さんのすきな高田渡や加川良なんかも結構いけるね。」

偉そうな態度に吹き出しそうになりながら大人の音楽談義が展開される。
フォークは歌詞と雰囲気がいいそうな。しかし、海を渡ったサザンロック
ブルース・カントリーなんかはよく分からないらしい。
では実地検分。シバを聴かせると「恰好いいね。」ディランⅡを流すと、
「これは余り良くない。」
次に三上寛をかけると、「これはやめて!ち
ょっと気持ち悪過ぎる」だって…。
ひとまず私と嫁の刷り込み歌合戦はどうやら私に軍配があがったようだ。


またテレビに関しても、好きな番組は、野球中継とドキュメント72時間、
落語ザムービーだとか(夜遅いからたまにしか観られないが)。
「母さんの見てるバラエティーやドラマには興味ない!」なんて嬉しい
事を言ってくれると思っていたら、外出した私がこそっと帰ってくると、
皆で楽しそうにバラエティーを観ている。私は一人寂しく別部屋へ引き
こもり。日頃より「あんなん観るんじゃない」と言ってゴールデン帯の
番組を制限し過ぎたかな…と反省しきり。
なのでこちらの軍配は嫁に上げざるを得ないか。

但しこれは長男の話。次男と長女は私の叫びは全く届いてないようす…。


by ut9atbun61 | 2018-05-19 22:22 | 田舎 | Comments(0)

包丁研ぎ職人

先日、大学生が遊びに来た(というか手伝いに来てくれて)時の事。
「海さん家の包丁を研ぎましょうか?」
聞くと、親戚の叔父に研ぎ名人がいて、影響を受けハマっているそうだ。
元来、古風な雰囲気を持っていた子だから、言わずもがな。
早速、マイ研ぎ石をカバンから取り出し、既に臨戦態勢だ。
「おー、それじゃ頼むぞ!」
包丁3本手渡すと、彼の目付きが変わり、体を屈めて砥石を睨む。
シャッ、シャッ、とリズミカルな音が耳に飛び込んでくると、私はいつの間に
か幼い頃に戻っていた。
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私の祖母はアパートの大家さん。アパートというと聞こえはいいが、昭和期に
あって既に古臭く、ガタピシした長屋のようなものだった。なので住人達も変
わった人ばかり。ヤクザ、バーの女給さん、(昭和の)中年フリーター、精神疾
患者、生活困窮者。それでも皆、優しくて面白い人達だった。
(余談だったけどこの時の暮らしが私の精神性を作ってくれたと確信している。)
そんなアパートに、数か月に1回、包丁研ぎのおっちゃんがやって来る。
歪んだ自転車をギィギィいわせながら、くわえタバコの胡麻塩頭。荷台に沢山
の袋をぶら下げて。うちのアパートの前に自転車を止め、袋から様々な砥石を
出して並べて、水を汲んでくる。そうしていると…、(どうやって人が集まっ
てきたかは覚えてないが)おばちゃんたちが包丁を持って集まってくる。
そしておっちゃんは、包丁を一つづつ研ぎ始める。シャッ、シャッ…。
心地良い一定のリズムで手を前後していく。くすんでいた包丁も、瞬く間にピ
カピカに!新聞紙で切れ味を確かめるように、斜めに刃を振り下し、完成!
おばちゃんらは、さも当たり前にそれを受け取りお金を払う。おっちゃんも黙
って受け取る。そこにほとんど会話はなかった(と思う)。私を含め近所の子供
数人は、場の雰囲気に飲み込まれながらも、おー、と小声で囁きながらじっと
その様子を見つめる。研ぎ屋のおっちゃんは時折、私たちを見てニヤッと笑う
(話したという記憶もない)。私たちにとっておっちゃんは最高にカッコイイ
憧れの人だった。
夜、家に帰って母親に包丁研ぎの話を羨ましげに言うと、母親はキッとなって、
「あのおじさんはね、昔良くないことをしてね、警察に捕まったとよ。それで
何の仕事も無くて仕方なく包丁を研いで貧乏な生活しとるんよ。だけんあんた
は、ちゃんと勉強してちゃんとした仕事につかな、いけんよ。」
今思えばひどい言い方だが、そう言われても私にとって今でも眩しい人である。
「海さん、終わりましたよ。」
額に汗をにじませ、彼が笑顔で振り返る。そして、やはり新聞紙を手に包丁を
入れる。
「こうすると更に切れ味が増すんですよ。」
成程そういう事だったのか…。「ありがとな!」
万能包丁と称して、鶏の骨から小枝まで切り尽くしたボロボロの包丁が、今目
の前で、光っている。本当に切れるようになったかな?と軽く刃先に指を添え
てみた。スッと冷たい感覚が走り、指の腹から赤いものが滲んできた。
ああ、包丁研ぎ職人にようやく再会した! と嬉しさもこみ上げてきた。

by ut9atbun61 | 2018-03-30 22:55 | 田舎 | Comments(0)