刷り込み合戦 ~長男編~

車に乗ってエンジンをかける。すると、スピーカーから今時の流行り歌。
気取り声に陳腐な歌詞、ガチャガチャと演奏。私にとってはもはや騒音。
ラジオでも聴こうかと思う先に、助手席から手が伸びてきた。
手際良く嫁のCDが取り出され、私のUSBが差し込まれる。
乾いたギターの音に言葉が絡まっていく…。
12歳になる長男が一言。「やっぱ、これだな。」

私の中では甘ちゃん子ども、と思ってたが、どっこいそうでもなかった。

「突然どうしたん?」と取りあえず聞く私に、
「えっ、母さんが聴く曲つまらないからね。」

さらりと言う。マイノリティー派としては、ちょっと嬉しくなって
「文はどんな音楽が好きなんか?」

「わしはね、やっぱり泉谷しげるが1番かな。なぎら健壱もすごくいい。
お父さんのすきな高田渡や加川良なんかも結構いけるね。」

偉そうな態度に吹き出しそうになりながら大人の音楽談義が展開される。
フォークは歌詞と雰囲気がいいそうな。しかし、海を渡ったサザンロック
ブルース・カントリーなんかはよく分からないらしい。
では実地検分。シバを聴かせると「恰好いいね。」ディランⅡを流すと、
「これは余り良くない。」
次に三上寛をかけると、「これはやめて!ち
ょっと気持ち悪過ぎる」だって…。
ひとまず私と嫁の刷り込み歌合戦はどうやら私に軍配があがったようだ。


またテレビに関しても、好きな番組は、野球中継とドキュメント72時間、
落語ザムービーだとか(夜遅いからたまにしか観られないが)。
「母さんの見てるバラエティーやドラマには興味ない!」なんて嬉しい
事を言ってくれると思っていたら、外出した私がこそっと帰ってくると、
皆で楽しそうにバラエティーを観ている。私は一人寂しく別部屋へ引き
こもり。日頃より「あんなん観るんじゃない」と言ってゴールデン帯の
番組を制限し過ぎたかな…と反省しきり。
なのでこちらの軍配は嫁に上げざるを得ないか。

但しこれは長男の話。次男と長女は私の叫びは全く届いてないようす…。


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# by ut9atbun61 | 2018-05-19 22:22 | 田舎 | Comments(0)

たまたま通信 5月号 

鶏はキツネにやられ、エサはネズミにやられ、肥料はカラスにやられ。
なんてこった大自然!
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# by ut9atbun61 | 2018-05-01 20:23 | たまたま通信(養鶏) | Comments(0)

たまたま通信 NO.144 4月号

たまたま通信4月号。
今春よりお客さんも増え、やる気も増殖中。今年度もよろしくお願いします。
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# by ut9atbun61 | 2018-04-14 21:47 | たまたま通信(養鶏) | Comments(0)

包丁研ぎ職人

先日、大学生が遊びに来た(というか手伝いに来てくれて)時の事。
「海さん家の包丁を研ぎましょうか?」
聞くと、親戚の叔父に研ぎ名人がいて、影響を受けハマっているそうだ。
元来、古風な雰囲気を持っていた子だから、言わずもがな。
早速、マイ研ぎ石をカバンから取り出し、既に臨戦態勢だ。
「おー、それじゃ頼むぞ!」
包丁3本手渡すと、彼の目付きが変わり、体を屈めて砥石を睨む。
シャッ、シャッ、とリズミカルな音が耳に飛び込んでくると、私はいつの間に
か幼い頃に戻っていた。
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私の祖母はアパートの大家さん。アパートというと聞こえはいいが、昭和期に
あって既に古臭く、ガタピシした長屋のようなものだった。なので住人達も変
わった人ばかり。ヤクザ、バーの女給さん、(昭和の)中年フリーター、精神疾
患者、生活困窮者。それでも皆、優しくて面白い人達だった。
(余談だったけどこの時の暮らしが私の精神性を作ってくれたと確信している。)
そんなアパートに、数か月に1回、包丁研ぎのおっちゃんがやって来る。
歪んだ自転車をギィギィいわせながら、くわえタバコの胡麻塩頭。荷台に沢山
の袋をぶら下げて。うちのアパートの前に自転車を止め、袋から様々な砥石を
出して並べて、水を汲んでくる。そうしていると…、(どうやって人が集まっ
てきたかは覚えてないが)おばちゃんたちが包丁を持って集まってくる。
そしておっちゃんは、包丁を一つづつ研ぎ始める。シャッ、シャッ…。
心地良い一定のリズムで手を前後していく。くすんでいた包丁も、瞬く間にピ
カピカに!新聞紙で切れ味を確かめるように、斜めに刃を振り下し、完成!
おばちゃんらは、さも当たり前にそれを受け取りお金を払う。おっちゃんも黙
って受け取る。そこにほとんど会話はなかった(と思う)。私を含め近所の子供
数人は、場の雰囲気に飲み込まれながらも、おー、と小声で囁きながらじっと
その様子を見つめる。研ぎ屋のおっちゃんは時折、私たちを見てニヤッと笑う
(話したという記憶もない)。私たちにとっておっちゃんは最高にカッコイイ
憧れの人だった。
夜、家に帰って母親に包丁研ぎの話を羨ましげに言うと、母親はキッとなって、
「あのおじさんはね、昔良くないことをしてね、警察に捕まったとよ。それで
何の仕事も無くて仕方なく包丁を研いで貧乏な生活しとるんよ。だけんあんた
は、ちゃんと勉強してちゃんとした仕事につかな、いけんよ。」
今思えばひどい言い方だが、そう言われても私にとって今でも眩しい人である。
「海さん、終わりましたよ。」
額に汗をにじませ、彼が笑顔で振り返る。そして、やはり新聞紙を手に包丁を
入れる。
「こうすると更に切れ味が増すんですよ。」
成程そういう事だったのか…。「ありがとな!」
万能包丁と称して、鶏の骨から小枝まで切り尽くしたボロボロの包丁が、今目
の前で、光っている。本当に切れるようになったかな?と軽く刃先に指を添え
てみた。スッと冷たい感覚が走り、指の腹から赤いものが滲んできた。
ああ、包丁研ぎ職人にようやく再会した! と嬉しさもこみ上げてきた。

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# by ut9atbun61 | 2018-03-30 22:55 | 田舎 | Comments(0)

谷迫組覚書

おらが集落には“組”というのが4つある。
近所付合いする上での最小単位とでも言おうか。
更に、おらが組は谷迫組といって(谷が迫っているところだからか)現在4軒。
その組長を今年度やり終えた。ほっと一安心と、先週庚申様という組長交代の儀を
やった。平たく言えば、組内で飲み食いして話をする会だ。
その会で、『谷迫組覚帳』というノートが話題に。
昭和43年より組に関する覚書をしている貴重な文書だ。
確かそんなものあったなと思い、その夜、組長セットから引っ張り出してみた。
茶色く日焼けしたB5ノート。辛うじてばらけてないのは先人達の怨念なのか。
昭和43年当時は、9軒住んでいた様子。藏之進だの勘七だの血気盛ってそうな名
前が居並ぶ。大体当時の書き留めた内容は葬儀と会計報告。おそらく葬儀は一大イ
ベントだったに違いない。最近まで存命だった大工棟梁が書いた心得があった。
                             (一部抜粋)
“葬儀に於ける気の付ける点”…買い物は婦人を主体に 良く聞き 相談する事
             …受付はまじっくは不可 墨が良い
             …壺堀りの食事の件 風呂を沸かして置く
             …黒豆を撒く習慣あり
と何とも雰囲気たっぷり!気の荒いおっさんらが、葬儀では動揺して婦人衆に頼っ
てるだろう姿が微笑ましい。また壺掘りというのは、おそらく土葬の事であろう。
また当時の会計記録を見てると、何とまあ酒の字が多い事多い事!
 谷迫道路修理 ○○氏より酒1本
 道草刈り   ××氏よりビール5本
 分道の橋補修 人夫誰々… 焼酎1升 1級酒
 道路修理   ▽△氏より2級酒2本
酒の分類と誰から貰ったかは事細かだ。この時代の日当は酒が一番なのだろう。 
そして昭和61年からぷつりと記録が途絶え、時代は変わり平成14年。
何と私がちゃんと記述しているではないか! すっかり忘れていた。
私が尊敬していた無農薬独りぼっち農業をやっていたじいちゃんが亡くなった時だ。
この方は強く土葬を希望されていたので、集落で久しぶりの土葬をした。
私は墓掘り(壺掘り)を名乗り出て、他3名と一緒に掘った。清々しい汗をかいた。
(これは覚えてないが)どうやら人生初の葬儀委員長まで務めさせて頂いたようで、
ちゃんと記されてある。有難や。
しかし、残念ながらそれ以降は数年に1回、その年にあった出来事が簡単に書き留
めてあるだけで、ノートが寂しくなっている。
こうした記録は集落の歴史であり、文化につながるんだ…。
そこに今夜、私はしっかり書き込んでいく。

 平成29年4月~30年3月まで 谷迫組組長 田中海太郎
野峠堤大改修も無事終わり、本年度より……。……このノートもずっと続いていっ
て欲しい! 未来の人が見返してくれる事を望んで‼

             

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# by ut9atbun61 | 2018-03-19 23:37 | 田舎 | Comments(0)