挙句の果てに  ~其の弐

ここは地方M市。或る自動ドアの前に立った。今から異次元の世界へ飛び
込む。緊張が高まっていく。大袈裟?そんな言葉もあるだろうが、私にと
っては小宇宙空間。気を整え、思い切って一歩、足を踏み入れる。
開扉と共にあるのは、白を基調とした壁、矢鱈と眩しい白の室内灯、それ
に加えモワッとした電子臭。その先に若人の声が電波の如く響いてきた。
「いらっしゃいませ!お待ちのお客様、こちらへどうぞ。」
別に待ってねぇよ。それに気後れする事無く、指定された席に座る。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
取りあえずの笑顔に促されて、口を開いた。
「えっと、先日携帯を無くして…、~で今回解約しようと思いまして。」
店員の顔が、一瞬曇ったのを私は見逃さなかった。
「あの、今解約しますと、違約金というものがかかりまして、……」
色々とコムズカシイ話を出してくる。よし、こっちは上から被しちゃえ。
「ああ、大体わかってますよ。でもひとまず必要なくなりましたから。」
「そうしますと、今お使いの番号が使えなくなります。そうでなければ、
利用一時休止という方法もございますが。」

「いや、休止じゃなくていいです。(小声で)どうせ維持費みたいなのがか
かるらしいし。別にどっかの電話に乗り換えるって訳でもないですから。
auさんは自宅で電波が入らなかったから、丁度良かったですよ。()
嫌味とでも思ったのだろうか、店員はニコリともせず、淡々と答える。

「そうですか、では~、ここにサインして下さい。」

「今月を持ちまして、携帯電話の契約を終了させて頂きます。ご利用頂
き誠にありがとうございました。」

私が、やれやれと立ち上がって背を向けた直後に、最後の言葉が飛んだ。

「次回契約をされる際も、是非ともAUをご利用下さい!」

ゆっくりと大股で自動扉を跨ぎ、これで現実世界に戻ってきた。
外気が何だか清々しい。凄く身体が軽くなった気分。ポケットに忍ばせて
いた腫物をもう触らなくてもよいという安心感、私に未知なる交信を強要
してきた赤い小悪魔とも、完全におさらば出来るという開放感。
シャバに出るとはこのような心持であるのだろうか!
いずれはまた、彼女らに面倒を看てもらう日が来るかもしれない。
明日なのか、はたまた2年後なのか、それともこの世とおさらばした後か?
それは神のみぞ知る、ってか。

追記
先日、早速友人が親切にも見合い話を持ってきてくれた。
「おい、最近安くて便利なスマホがあるから早く持てや!」
うんうん、と聴いておいたが、何が良いいのか分からない。
私自身、“携帯交際マニュアル”でも勉強しないと相手に失礼だ。
取り合えずは、前向きに検討していこう。


[PR]
by ut9atbun61 | 2018-02-05 23:12 | 田舎 | Comments(0)
<< たまたま通信2月号  挙句の果てに  ~其の壱 >>