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1月選書

 「曹阿瞞 鶏肋喰わされ 痩せ我慢」
 「孔融や 独言と共に 露と消え」
 「涼風が 心惑わす 錦馬超」

ちょいと調子に乗って、最近川柳にハマっている。

農閑期とはいえ、山で竹伐採仕事で半端ない疲れ様。
1月読んだ本はたった4冊。
寝正月の流れで三国志モノが占める結果になった。

 『筑豊炭鉱絵物語』 山本作兵衛
 『三国志逍遥』 中村愿 安野光雅
 『三国志談義』 安野光雅 半藤一利
 『三国志の迷宮』 山口久和

山本作兵衛さんの炭鉱絵画は芸術的であって写実的。勿論歴史学としての第1
級資料でもある。なのでとても不思議な感覚にさせられる。
私はケチって文庫版を買ったが、やはり大判を買うべきと後悔した。
ヤマ言葉やヤマ唄は意味を辿るでなく、雰囲気だけでそそられる。

三国志逍遥は安野光雅氏の絵観たさに購入。現代中国と三国時代を交差させて
描いてて、更に鑑賞者の想像力を重ねるといつまでも眺めてても飽きない。
それに、漢学者の中村氏の三国志解釈が説得力あった。曹操は人格者で真の英雄。
献帝は自ら禅譲を希望していた?とか。一方の劉備は無能だが計算高い。諸葛亮
は、それを利用して自らの野望を果たそうとした狡猾&冷酷人間。出師の表など
は自己主張とまで。そして劉禅は諸葛亮を恐れるあまり、暗愚なフリをしていた。

初めは、半信半疑だったが、読み進めるうちに、私達が読んできた三国志という
のは、あくまで、陳寿という蜀出身の歴史家や羅貫中という流行作家が書き上げ
たものであって、歴史考証という立場で書かれてない。色んな証拠書を出される
と妙に納得してしまった(「三国志迷宮」もこれと似た視点で書かれてた)。
余談だが、子供達にこのことを話したら凄くがっかりして、何か夢を壊したよう
な罪悪感にかられた。

そして安野さんと半藤さんとの放談。画家と歴史家のぶつかり合い。
武将や軍師を勝手に採点したり、三国志故事の新解釈など面白かったが、白眉だ
ったのは、三国志をテーマにした俳句川柳。先人の傑作からお二人の新作まで。
傑作だったもの!

 「三度まで 通いお蜀を 手に入れる」(江戸川柳)
 「橋一つ 張飛長阪 ノモンハン」(安野)
 「趙雲は ネンネンコロリと 首をはね」(半藤)
 「霜寒く 此の夜馬謖を 刎(くびき)りぬ」(内藤鳴雪)
 「喪を秘して 軍を返すや 星月夜」(漱石)

そして最後も安野先生。
「星落ちて その時本を 閉じにけり」
お後がよろしいようで。
by ut9atbun61 | 2017-02-10 00:36 |
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