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昭和史を読む

 半藤さんの「昭和史」を読んだ。
借り物でありながらも、忙しさにかまけて積載物となっていたのだが、手を付け始めると
面白くてあっという間。
近現代史は、大好きでかなり読んでたつもりだったが、意外と知らない事実が紛れてて
新たな感を得た(特に天皇の思想断片)。私は結構マニアックなので、歴史を点で捉え
がち。ある事象に興味を持つと、それをひたすら掘り下げていく。北一輝だの、満鉄だの、
農本主義と、あくまで1点物。調べるとそこで満足。関連付けて学ぶ事をしない。
しかしこの「昭和史」は、歴史を線で繋ぎながら背景をあぶり出す。時折エピソードを交え
てだから、とても読み易かった。あと、著者が最近の右傾化社会を憂う気持ちも伝わって
きた。

 ここのところ、友人と酒が入る夜の語らいで、かつての戦争ネタになる事がある。
私らの世代は、熱心な先生方が盛んに平和授業を行ってたので、当然、“純真平和主義
者”ばかりだと思ってた。ところがどっこい、同年代の友人が私の戦争責任論に喰ってか
かってくる(私はそういう友人の方が好き)。
「中国や韓国は日本をなめきってる。いつまで騒げば気が済むんか」
「うちらのじいちゃん達が、(中国)大陸でそんな悪い事をする訳が無い」
「南京大虐殺なんてものは、実は無かったんだよ」
“純真平和主義者”をからかうのが常だった私は、久しぶりにヒートアップ。面喰ったまま、
自らが純真君を演じるはめに。
「いや、いや、いや、違う!あの戦争ってのはねえ…」
でも大丈夫。最後はいつもバカ話でうやむやに。その程度。

 最近は日本の歴史を尊び有難る人達が大勢いる。それもこれも、左傾戦後教育に責任
の一端があるのかもしれない。だが、事実より思いばかりが先行しているのもまた事実。
歴史に想像力を持ち込んでもしょうがない。あと、美的感覚に訴えたり、他国との比較対
象で罪の軽重を論じたり、はたまた空気のせいにもする。
歴史の事実は必ず時と共に風化していくものだから、別に他国に卑屈にならずとも、自
省の意味で最も忌み嫌う部分をクローズアップしていくべきだと思う。そこから始めなけ
れば。現代の国民性だったら誇りは持っても、自虐なんていう謙遜はしないと思うから。
 何しろ戦争というのは、歴史なんかよりもっとリアルな世界。そう言う私も分からないし。

 最後に。10数年前、太平会という政治団体のマスダシン一というじいちゃんがよく選挙に
出てた。泡沫候補で笑ネタ扱いだったが、いつも気になる存在だった。彼は、特攻隊の生
き残りとして「天皇万歳、9条万歳」という持論を展開していた。弾をくぐってきた言葉は決し
て歴史でも思想でもない。片や、歴史や思想に美を持ち込んでしまうと、必ず行きつく先
は割腹になるんじゃないかな、と要らぬ心配をしてしまう。
by ut9atbun61 | 2014-01-31 00:07 |
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