旅紀行(2011) vol.3
「あけぼの」での幸せな夜長をそこそこに愉しんだ私は、長岡の駅を夢現でやり過ご
し、そのまま深い処へ。そして再び目が開いた時は、仄明るい空を黒い海が支えていた。 もうすぐ夜明けの5時。酒田辺りを走っている頃だろう。うとうとしながらも、海岸線に沿っ て勾配を感じながら走る列車の車窓を堪能する。そのうち相棒もゴソゴソ起きだしてくる。 8時19分鷹ノ巣駅で下車。 ここからは、豪雪絶景地帯の秋田内陸縦貫鉄道に乗る。 雪に足を奪われながら小一時間ほど散策して、9時36分の普通列車にのり阿仁前田で途中下車。 何故かというと、ここは全国でも数少ない温泉駅。改札をくぐるとすぐに温泉の受付。 東北の温泉駅はほっとゆだ駅が有名で、2回ほど立ち寄った事があるが、ここは初。 地元客に交じってゆっくりとお湯に浸かり、11時30分の列車に乗るべく風呂から上が ったはいいが、メガネが無い。ロッカー、洗面台、洗い場、湯船、くまなく探すが無い!! 地元客や店の人総出になって探すがやっぱり無い!!! またいつもの様に紛失癖が出たと思い、我ながら情けなく、とりあえず携帯(かみさ んから借りてきた)番号だけ伝えて、列車に乗り込む…。 それからというもの豊かな表情を魅せる景色などどうでもよく、暗く沈んで座席に埋も れていたところ、電話が鳴った。「メガネ、露天風呂にありましたよ!」と明るい天の声。 喜ぶ暇なく隣の駅で対向列車に乗ってとんぼ返り。そして駅員さんや車掌さんの協 力を得て、阿仁前田駅のホームでメガネを受け取り、そのまま待たせた対向列車に 乗って目的地角館へ行く事が出来た。 のどかな田舎の私鉄だから出来た事だろうと感謝・感激! 比立内辺りが最も山深い。秋田杉のトンネルの中をひたすら進む。まっすぐなレール。 その所々に橋がかかっており、遥か下には澄み切った原色の青緑の水が流れている。 美しい。またこの辺りは、マタギ(クマなどを狩猟する人の意)の里としても有名だ。 14時8分角館着。予定より一時間遅れた。 秋田内陸縦貫鉄道。地方私鉄で経営が厳しい中、色々趣向を凝らして頑張っているので、機会を作って是非(乗ってみて下さい)。 この後は、秋田新幹線こまちと東北本線を使って、ひたすら花巻を目指す。 余談だが、盛岡から普通電車に乗った時の事。うちの相棒は、暇潰しに広告紙で 剣作り。ちょっと手伝って完成させるとすこぶる満足げな相棒。暫くは独りでぶつぶつ 言いながら剣を振り回す。それに飽き足りず、次は相手探し。嫌な予感は的中。何と 足を前に投げ出し、ハタ迷惑に騒ぐヤンキー高校生集団にいきなり絡みだした。 「マズイ!喧嘩を売られる。」とこっちは身構えたが、高校生達は面白がって相手して きた。「うっ、やられた。」などと言うから、相棒は尚更調子に乗って切りつける。迷惑が っていた周囲の乗客も、そのうち微笑む姿が見られ、その車両全体が温かい雰囲気 に包まれたような気がしてほっとした。これも純粋無垢な子供の力か。 花巻で降りる際、相棒に「遊んでくれてありがとう」と言わせると、リーダー格の男子 が「いい剣士になれよ!」と言ってくれた。これも田舎ならではかなと感じた。 この後は、花巻名物マルカンデパートへ夕食を食べに行く。 つづく。
by ut9atbun61
| 2011-06-05 22:18
| 鉄道
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