「たいまつ」のことば
先程、NHKスペシャルにむのたけじ氏が出演、コメントを寄せていた。御歳94。
眼光鋭く、滔々と反戦論を展開。日本一マニアックな反骨ジャーナリストだろう。 彼は、戦争中に朝日新聞社に入社して中国、東南アジア特派員となるが、敗戦を 機に戦争責任を感じ、自主退社。以後、郷里の秋田で「たいまつ」という新聞を自費 出版。一貫して反戦を唱え、農業・地域を取り上げ続けた。 私が学生時代、マスコミ関係の仕事に憧れたのは彼の影響が往々にしてあったし、 現在、こうして農業にかかわっているのはやっぱり彼の影響だったのかもしれない。 そんなむの氏の「たいまつ」に連載された言葉達を集めた本。『詞集 たいまつ』。 一見、よくありがちな“ありがたや名言集”のようだが、よく読み込むと本人の活きた 経験から出てきた感が強く、一味違う。 コメがゆたかにみのることを願う人は多い。コメをつくる人がゆたかに なることを願う人は少ない。あまりに少ない。 この言葉は、内(農家)と外(国民)両方に問いかけているようで、色んな意味で リアル…。田舎に浸かった者であるからこその言。 日本人の精神の振り子は、おおむね〈法要〉と〈おみこし〉のあいだを 往復している。つまり、実在していないものをダシにして悲しげにさわ ぐか、実在していないものをダシにしてうれしげにさわぐか、いずれそ のようにしてにぎやかにしているときは生きている気がするという振幅 である。精神が自立していないのである。 これも痛烈で、見透かされた上、自分に突っかかってくる感じ。 但し、全編を通じて厳しさに覆われている。常に権力と闘ってきた所以だろう。 たまに首を傾げたくなるような言葉もある。それもこれも、にんげん所以。 “癒し”を求める今の時代にはちょっと重すぎるか?しかし私は好きだ。
by ut9atbun61
| 2011-02-27 23:05
| 本
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