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ゴボウの木の下で

うだるような暑さの昼下がり、涼を求めてイタチがふらつく足取りでやって来た。
夜を見失ったのか、はたまた昼更かしが過ぎたのか、目は真っ赤に腫れ、身体は
小刻みに震えてる。
鶏小屋の前に大きく葉を広げたゴボウの木を見つけ、イタチは倒れ込むようにし
て身体を根元に預けた。

その姿を小屋の中から見ていた雌鶏が笑う。
「あーら、ご無沙汰のイタチくん、真昼間ってのに何やってんだい。そんな不景
気な間抜け面では、いつまでたっても獲物にありつけないわよ。コッコー!」
イタチは疲れ切った頭をもたげてじろりと睨みつける。そしてつぶやくように、
「けっ、勝手にほざいてろ。どうせ、寒くなって黄色い脂がのってきたら、貴様
らの年貢納めの時だい!その時になって泣きわめいても知らねぇぞ!」
「ええ、どうぞどうぞいらして下さいな。確かに去年の冬は隙間だらけで、あん
たたちにさんざん殺られてしまったけど、もう大丈夫。この前、ダンナが一日が
かりでトントン直してたから。ま、この様子じゃ、冬どころか夏を越すのも難し
いようだわ。せいぜい身体気を付けなすってね、コッコー!」

イタチがギリギリと歯ぎしりしていると、背後でヒーヒーといううめき声が。
振り返ってみると、哀れ、麻紐でギュウギュウに縛り上げられたブルーベリー木
の姿。木肌に紐が食い込んで、風が吹く度に口から声が漏れてくる。
「おいおい何だ、ブルーベリーさんよ、一体どうしたってんだい?」
よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに口を開こうとしたブルーベリーの御株
を奪った雌鶏がまくしたてる。
「なあに、怠け者のブルーベリーちゃんが色気ばかりで実を付けようとしないか
ら、うちのダンナがお仕置で縛ってんに違いないわ。ちやほやされて調子乗って
るからこういう事になるのよ。いい気味だわ。コッコー!」
ブルーベリーは激しく首を横に振って何か言葉を発しているのだが、麻紐がさる
ぐつわともなって、聞こえてくる音は「ヴーヴー」と「ヒーヒー」だけ…。

「あ、あ、あの、そ、そんな言い方って、な、ないんじゃないかな。鶏さん、ち
ょ、ちょっと、い、い、意地悪だと、ぼ、ぼ、ボクは思うな。」
上の方から声がする。イタチは大儀大儀に天を仰いだ。
「今度は誰だい、気弱な声を出してんのは!」
「コッコッコ―、うるさいわね!カボチャのくせして上から目線なんて。あんた、
誰からも相手されないからっていちゃもんつけないでよ。こぼれ種からたまたま
芽を出して、うちの屋根に上がって勝手に住み着いてるようだけど、どうせその
うちカラスに食い散らかされてご臨終だわ。あーミジメ、ミジメ。」
カボチャもまた言い返せず黙り込む。

「あー、どいつもこいつも嫌な奴ばかりねー。おまけに暑いし、雨は降らない。
エサは少ないし、夏の草は固いし、もー、ほんとムカつくから、夜にさっき産ん
だ卵を食べてやろう。どうせウスノロダンナは分かりゃしないわ。あれがなかな
か美味だんだよねー、コッコー!」
その時、イタチがニヤッとほくそ笑んだのを雌鶏は気付いてなかった。

翌朝早く、いつものようにダンナが眠い目をこすりこすり鶏小屋にやって来た。
そしていつものようにエサをあげ、小屋の外から手を突っ込み卵を取ろうとし
た。すると突然、ダンナが「あわわっ!」と素っ頓狂な声を上げてのけぞった。
そして恐る恐る中を覗き込む。
…暫しの沈黙の後、「くっそー!またやりやがったな、コノヤロー!」
ひとしきり腹を立てて、気持ちを落ち着かせ、ダンナは小屋の中へと消えた。
出てきた時には、右手にぐたーっと首が折れた雌鶏を抱えている。
もう彼は無表情、雌鶏の遺体を捨てるために山に登って行った。

(本文はフィクションです。しかし、実在の事件、実在の場所と実際の物を
 基にして作り上げました。)
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by ut9atbun61 | 2016-08-30 23:50 | たまたま通信(養鶏) | Comments(0)

むのたけじ 哀悼 

伝説のジャーナリストむのたけじさん、101歳の大往生。
自由を追い求め、言葉を紡ぐという営みを最も大切にしてきた人だった。
私は、この方が大好きで大好きでしょうがなかった。
以前もブログの中で礼賛しまくっている。

「生物を飼わない農家は、農家じゃない。雑草の生えない農地は、農地じゃない。物言わぬ農民は、農民じゃない。歌を歌わぬ農民は、もっと農民じゃない。人が歌わなきゃ、土も歌わぬ。歌わぬ土に、良い成りものができるわけがない。」
私はこの詩が一番好きで、最近これを基に、唄を作ってみたところだった。

早速詞集『たいまつ』を読み返す。すると現代への遺言がちゃんと書いてあるじゃないか!
きんぺい君やらパクちゃんやらあべ君に是非聞かせてあげたい。

「陸・海・空の領有を主張して他国と対立している国々は、教師たちである。人間達を根元からダメにした根元の原因は、所有の欲望からきていることを教えつつある偉大な教師たちである。故にそれら諸国家には、身動きできない重さの巨大な勲章を与え、じっと座っていてもらわねばならぬ。一地球のものは地球に返せ。」(2000年頃の詩)

単に目くじらたててサヨク的言動を繰り返すわけではない。
痛烈なアイロニーで斬りすて御免てな訳。これぞ雑草ジャーナリスト魂。

「ボロを旗として一ものかね本位の世づくりは、心の柱を狂わせる。見つめればどれも砂の城。賑わう中身に何もない。…けれど、僕らは嘆かない。みのれぬ種子がみのらぬは、土はまともと物語る。土から出直す合言葉、ボロをかざしてよみがえる。夜明けに高くボロの旗。金ぴか言葉は二枚舌、ニシキノミハタはうそをつく。これまで一度も民衆に、幸せ運んだことがない。(中略)けれどぼくらはくじけない。いま民衆が巻き起こす、独立独歩、自主の風。達磨も立って歩き出す。さきがけてゆくボロの旗、世直し招くボロの旗。」

窮屈な時代と言われる昨今、こんな人があちこち出てきてほしい。
いや私も在野でむのさんのような生き方をしたい一人だ!
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by ut9atbun61 | 2016-08-21 22:14 | Comments(0)

失敗の先に見るものは?

昨日、約1ヶ月ぶりのまとまった雨。ひとまず胸をなで下ろす。
そして今日は有機のがっこうで実地研修。
7月にソルゴー&米ぬかを鍬込み、2回耕うん。そして経過順調であれば、
来月には白菜・キャベツ・ブロッコリー・大根などの秋野菜を植付け、
年内には素晴らしい出来で祝杯!といった計画だったが…。
朝、圃場に行ってみると、全面が黒っぽい。雨に濡れての黒さでもないし。
さらにちょっと臭う。ひょっとして!昨日からおっさんがケールの元肥を
撒き始めていた。うちの圃場を間違えたんだ!その量約2t。
これではもう9月定植は無理(ガスが発生するから)。それ以上に過剰施
肥の心配も…。くっそー!とうめいたとこでどうにもならぬ。説明不足と
立会いしなかった自分に責がある。
天野事務局長も「それはあなたがいつも師匠さんに頼ってたからそんな事
になったのでしょ。」確かにその通り。少々強引な面倒見よいオヤジとし
て甘えてたから。いつかは自分でやろうというのが仇に。
山下校長の判断で、9月定植は無理、耕うんを継続して10月に葉物系冬
野菜を蒔くことに。気持ちの切り替え新たに早速耕うん開始。
失敗を成功に導く努力を始めよう!
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by ut9atbun61 | 2016-08-17 22:31 | 農業(有機) | Comments(0)

農夏は1日にしてならず

夏! 世は真っ盛り。友人たちは海へ、山へ、街へ、故郷へと繰り出す。
中には海外というゴージャスな奴も。
そんなネタをぼんやり聞き流しながら、忙しさに尻叩かれせっせと農作業。
収獲→準備→出荷→野良仕事→収穫→準備→出荷→…。大体このスパンが
1~2日。普通の農家では当たり前の事。
しかし我が家は夏休みともなれば嫁子供は帰省。出荷配達という仕事が増
えるのだ。だから「やった―、自由だ!」と手放しにはならない。
草刈、掃除、洗濯、食事、とおまけが幾つでもついてくる。そしてたまに
は、夜にでも英気を養わねばならないし。
おかげで最近は、座った時に睡魔に襲われるという始末。風呂、運転中、
夜読書と何やら危なっかしくなってきた。

以前の真夏はそこまでではなかった。
ヘリコプターの農薬散布の手伝いをやっていたから。作業は朝5時から夜8
時までと丸一日ではあったが、日中4時間ほどはフリー。読書やギターと
そこそこゆとりがあった。それでいて収入もそこそこ。
けれど、農薬は私の心と体に合わないので、5年ほどで白旗を挙げた。
勿論、その5年間は意味があったと思っている(嫌々ではあったが)。
農薬の実態を身近に感じ取れたし、現在有機でやっててもあの時があるか
ら周囲も理解してくれている(と思う)。

ただ夏場に空散分の収入を得るためには大変な事だと今更実感。冒頭の勢
いでやってもなかなか得られないお金。小さな自転車操業の感。

身体は終始悲鳴を上げているが、忙しさ故、暑さを多少忘れられるという利
点もある。「やれ終わった」と薄暗くなり始めた空を見上げると、もう涼し
い風が頬を撫でてくれる。

そろそろ、1人役の体力的限界が見えてきたので雇うという事も考え始めな
ければならない。まだ研修生を段取り良く指示出来てない私には、至難の業。

盆が過ぎるとすぐに秋作業の準備が始まる。
くそー!青春18きっぷよ。お前も自慢しながら私の前を素通りする気か‼
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by ut9atbun61 | 2016-08-12 22:03 | 農業(有機) | Comments(0)

処凛ちゃんが行く!

今や反貧困運動のカリスマになってる雨宮処凛さん。
彼女の文章が出てたので久しぶりに読んだ。マガジン9条「雨宮処凛が行く」
現在の私の唯一の自慢、処凛ちゃんとお友達だったんだよね!
彼女は昔からバリバリの左翼と思われてる方も多いだろうが、実は違う。
昔はゴリゴリの右翼だった。『民族の意思同盟』という超国家主義団体で、日の丸
掲げて特攻服をまとう姿は正直怖かった。
で、ひょんなことから左翼な私と出会って、一緒に朝鮮に行く事となり(ま、普通
じゃありえないわな)、意気投合して彼女の『維新赤誠塾』に加入。反米愛国民族
派パンクバンドという訳のわからないままにギターを弾いた。
その中で私は随分と相反する思想に影響を受けた。左から右に揺れて丁度収まりの
いいところに止まったと(自分では)思う。彼女は様々な立場の人と話すうちに右
から左へと急旋回した。これは決して世にいう転向というものではない。
右翼を名乗ってた頃の彼女の言葉は、常に「幻の天皇陛下、幻の日本」という心の
拠り所求めるものだった。しかし今の彼女の言葉は、社会からこぼれ落ちそうな人
たちに寄り添っている。だから私はハッとさせられるし、共感を覚えるのだ。そし
て何よりも陳腐なきれいごとは語らない。
ただ彼女は昔も今も変わらないところがひとつある。
幾つになっても夢を熱く語る純粋な少女かな…。


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by ut9atbun61 | 2016-08-07 22:40 | Comments(0)

最新農装レビュー

先日先輩農家と後輩農家を訪ねた時、この暑い中、両人共黒の長袖シャツを着
ていた。見るからに暑そう。半袖ポロシャツの下に、である。
聞くと、「知らんの?今これが最先端。汗を吸ってとにかく涼しい。日焼けも
しないし、ブトにも刺されにくい。」という。
まさか、風通し悪くて絶対暑いに決まってる、そう思いつつ知らぬ口惜しさで、
翌日ホームセンターに買いに走った。シャツ1枚、野口英世1人と等価交換とは!
スルスルした肌触りで、何かビニールっぽい。着ると肌にピッタリ密着。何だか
保温効果抜群のような気がする…。
半信半疑ながらも、最先端の農家ファッションを身につけたという優越感が自然
と気持ちを高ぶらせる。気分はもうプロ大農家。よし、バリバリ働くぞと、午後
1時の熱射に抗って飛び出した(普段は3時迄休憩というのに!)。…ま、へたる
までにそれほど時間は費やさなかったけど。
確かに涼しさは感じた。上半身の汗が何処かへ消える代わりに、メンソールのよ
うな不思議なひんやり感が生まれる。しかし私には違和感。汗をかいた気がせず、
締め付けられた皮膚にはヒリヒリ感が残る。そして上半身の汗が顔と下半身に分
散したようにふき出してくる。汗で視界を遮られ、下半身にはお漏らしかと惑う。
それでも、近所の人が来たのでちょっと格好つけようと無理に涼しい顔して自慢。
しかし、「何じゃその変な格好は?今から川でも入っとか?」
決しておくがのスタンダードとはなれないだろう。
結局長袖シャツは洗濯をして綺麗にたたんで引き出しの奥へ。

農の装いというのは目まぐるしく変わる。私が就農して15年、様々なものが登場
ては(私の前から)消えた。軍手に代わって、"まるで手袋してないかのような感
覚の"薄手の作業手袋、そんな感覚を持つぐらいならしない方が良いと思ったが、
試しに使ってみるが、やはり所詮は手袋。邪魔になり、つい畑に置きっぱなしで
行方知らず、左手袋ばかりになってしまい、アウト。
また、ヒートテックとかいって、薄手で保温効果抜群の冬用長袖シャツが流行っ
た時も使ってはみた。が、冬作業は結構動いて汗をかくので、動き出しの時だけ
上に着込んで、汗が出てきたら(場合によっては)シャツ1枚になるから結局は
これも邪魔になる事が分かった。あと、首や手に巻く水冷剤も邪魔くさいし。

農の便利品というものは、ことごとく私に合わない事がよく分かった。
今日も私はよれよれTシャツを肩上までまくり上げ、日焼けした腕にヤブ蚊やブト
がたかる姿を不快に思いながらも、土と汗にまみれています。
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by ut9atbun61 | 2016-08-03 23:44 | 田舎 | Comments(0)

たまたま通信8月号

熱さと渇きにうわ言を唱えつつ、草刈と畑仕事に向き合う毎日。
8月号発行。とはいえ、肝心の画伯に絵をお願いしてなかった。
こりゃ熱さ対策より頭を抱えてしまうぞ…。
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by ut9atbun61 | 2016-08-01 23:28 | たまたま通信(養鶏) | Comments(0)