カテゴリ:田舎( 247 )

挙句の果てに  ~其の弐

ここは地方M市。或る自動ドアの前に立った。今から異次元の世界へ飛び
込む。緊張が高まっていく。大袈裟?そんな言葉もあるだろうが、私にと
っては小宇宙空間。気を整え、思い切って一歩、足を踏み入れる。
開扉と共にあるのは、白を基調とした壁、矢鱈と眩しい白の室内灯、それ
に加えモワッとした電子臭。その先に若人の声が電波の如く響いてきた。
「いらっしゃいませ!お待ちのお客様、こちらへどうぞ。」
別に待ってねぇよ。それに気後れする事無く、指定された席に座る。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
取りあえずの笑顔に促されて、口を開いた。
「えっと、先日携帯を無くして…、~で今回解約しようと思いまして。」
店員の顔が、一瞬曇ったのを私は見逃さなかった。
「あの、今解約しますと、違約金というものがかかりまして、……」
色々とコムズカシイ話を出してくる。よし、こっちは上から被しちゃえ。
「ああ、大体わかってますよ。でもひとまず必要なくなりましたから。」
「そうしますと、今お使いの番号が使えなくなります。そうでなければ、
利用一時休止という方法もございますが。」

「いや、休止じゃなくていいです。(小声で)どうせ維持費みたいなのがか
かるらしいし。別にどっかの電話に乗り換えるって訳でもないですから。
auさんは自宅で電波が入らなかったから、丁度良かったですよ。()
嫌味とでも思ったのだろうか、店員はニコリともせず、淡々と答える。

「そうですか、では~、ここにサインして下さい。」

「今月を持ちまして、携帯電話の契約を終了させて頂きます。ご利用頂
き誠にありがとうございました。」

私が、やれやれと立ち上がって背を向けた直後に、最後の言葉が飛んだ。

「次回契約をされる際も、是非ともAUをご利用下さい!」

ゆっくりと大股で自動扉を跨ぎ、これで現実世界に戻ってきた。
外気が何だか清々しい。凄く身体が軽くなった気分。ポケットに忍ばせて
いた腫物をもう触らなくてもよいという安心感、私に未知なる交信を強要
してきた赤い小悪魔とも、完全におさらば出来るという開放感。
シャバに出るとはこのような心持であるのだろうか!
いずれはまた、彼女らに面倒を看てもらう日が来るかもしれない。
明日なのか、はたまた2年後なのか、それともこの世とおさらばした後か?
それは神のみぞ知る、ってか。

追記
先日、早速友人が親切にも見合い話を持ってきてくれた。
「おい、最近安くて便利なスマホがあるから早く持てや!」
うんうん、と聴いておいたが、何が良いいのか分からない。
私自身、“携帯交際マニュアル”でも勉強しないと相手に失礼だ。
取り合えずは、前向きに検討していこう。


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by ut9atbun61 | 2018-02-05 23:12 | 田舎 | Comments(0)

挙句の果てに  ~其の壱

かれこれ2年程は付き合ったであろうか? 昨年末、突如、彼女が私の前から姿を
消した。まぁ、どうせいつものように、ふざけてかくれんぼか、放ったらかしです
ねてるに違いない。そうたかを括る私の読みは、今思うに随分浅はかだった。

そもそも、最近の人間とケータイの恋愛事情はかなり際どい所まで来ている。
「死ぬまで一緒にいようね!」なんていう甘い言葉でもかけあっているのか、四六
時中見つめあっている異形カップルを良く電車の中で見かける。
また夫婦・親子関係に於いても、それぞれのケータイが取り持っているという新し
い家族形態が生まれている。そうなれば、もう周りは何も見えない。
彼女といちゃいちゃしてて事故を起こしたトラックドライバー、現代社会の歪み
に抗してか、彼女と共に部屋に立て籠もった若者達、枚挙にいとまがない…。

今年に入って、私もさすがに彼女の事が心配になって、嫁に恐る恐る聞いたのだ
が、怖い顔で知らぬ存ぜぬ、の一点張り。確かに聞く相手を間違えた。と今度は、
auとかいう彼女の親元に出向いて行方を尋ねたのだが、「あんたのそば(約5k
範囲内だとさ!)に彼女はいるはずだ」と白を切る始末。どうせ、私が彼女につ
れなくしてきたのを根に持った対応だろうと、私は早々に諦めた。

考えてみれば、彼女も私のような人間と出会って不幸だったかもしれない。
元々、彼女とは一方的なお見合いみたいなものだった。
周囲が「もういい歳なんだから、突っ張ってないでそろそろ持つものを持て」と。
私も満更ではなく、相手方に乗り込んでいったのだが、先方では私が余りにも我
がままばかり言うんで、呆れ半ば強引に押し付けてきたのが彼女だった。
当時からかなりの年増で、細面にけばけばしい赤い服、まさに昭和の残り香を振
りまいていた。それでも初めて見る私は、随分と眩しく映ったものだ。

それから新生活が始まった。私もようやく一丁前になった心持で、嬉しくもあり、
あちこちで彼女の自慢をするのだが、周りは引き気味。それでも私も彼女もそん
な傍目を気にせず、先の長くないな幸せを過ごしていた。
ところが、暮らし方が変わるというのは恐ろしいものである。私が彼女を得てか
らというもの、彼女がいつも付きまとって横で騒ぎ立てる。初めはお茶目だと笑
っていたが、段々煩わしくなってくる。中でも、会議や講演会といった静寂を要
する処でも彼女はお構いなし。幾度となく周囲から氷水を浴びせかけられた!
更には、まったく与り知らぬ情報を押し付けたり、見知らぬ男の話なんぞをする
始末。挙句の果てには、月千円程小遣いをあげてたのが、翌年から足らぬと言っ
て2千円要求し始めた。これは詐欺同然である。
到頭、自分の前で、彼女というブロックがゆっくり崩れていった。

以来、私は彼女を邪険に扱いだした。あちこちに連れて行かない、無視する、off  
にして存在を否定する、時には手を上げる事も…。彼女の痛々しい姿を見かねて、
友人も忠告してくれるが、私は決して聞き入れなかった。
ちょうど姿を消したのは、そんな時だった。
そして今日、私はある決断を下す事にした。              ~つづく~


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by ut9atbun61 | 2018-01-30 23:51 | 田舎 | Comments(0)

「世界同時革命」と「田舎からの国づくり」

「世の中を変える」って事は、特定の人が変えるんじゃない、そして特別な事を
する訳でもない、ただ自身が真摯に暮らしに向き合う事だけ、そう2人の師から
私は教わった。それは自省と悟りだった。
その2人が今月、相次いで亡くなった。元赤軍派議長の塩見孝也氏と有機農業の
“天才”こと山下一穂氏だ。
お二方に共通するものは、優しさとパトリオティズム(愛郷心)。
片や闘争と獄中を経て自省のパトリ、片や農から世界を俯瞰する悟りのパトリ。
余りにも突然、まだ気持ちの整理はできてない、てか、整理なんかできない。
ここは失った悲しみより、出会った有難さを噛みしめたい。
後日、改めて本ブログで追悼辞を記したい。

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by ut9atbun61 | 2017-11-28 21:20 | 田舎 | Comments(0)

不思議な村の不思議な力

昨日、昼休み時に電話が鳴る。受話器の奥からはいつものだみ声。
「昼から、1時間ばかし、ちぃーとてご(手伝い)してくれんかのう」
でました、いつもの手! 天気良いから、このまま調子良く農作業を続けたかった
んだが…、「あー、ハイハイ。」と考えるより先に返事が口からこぼれていた。

13時。事務所に向かうとやはり居た居た。
隣の集落の大工に、左官、山師に…。お揃いの面々、おっさんに捕まり苦笑い。
さーて今日のボランティア活動は…、研修生新居の車庫作り、だそうな。
大工がぼやく。「チェーンソー研ぎを借りに来たらちょっと手伝えだと。」
それに山師が続く。「ちょっと研修生宅を見に来いと言われただけなんじゃが。」
“ちょっとちょっと詐欺”蔓延中。そこにまた新たな犠牲者が通りかかる。
町からたまたま上がってきた元大工、よせばいいのを車を止めて話しかける。
「皆お揃いで何しかね?」
「おーちょうどええところに来た。ちょっとてごせぇ!」
そのままインパクトとビスを押し付けられ、「わしは別の用事があるんじゃ…。」
と泣き言を言いながら屋根に上がる。
こうして、しかめっ面の面々も30分も経てば、職人の真剣顔に早変わり。
「ここはもう少し長めに切った方が後々細工しやすくなるで!」とか、
「ちょっと待ておっさん!こねぇなだらずをしたらいけん!こうするんじゃ。」
段々熱を帯びて、我が事のように活き活きとし出す。
私ももはや1時間ではきかなくなってしまった。まあこれも、いつもの事。

そうして陽が赤く染まり始める頃、いささかくたびれた面々は、すがすがしい顔
してビールを飲む。「はー、今日も捕まって昼からは仕事にならんかったわ!」
「そいでも、ええ仕事が出来たな。おっさんにはかなわんな(笑)。」

“嫌よ嫌よも好きなうち” この不思議な魔力こそ、田舎に必要な物かもしれない。
でもあんまり効き過ぎるのもどうかと思うけど…。
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by ut9atbun61 | 2017-11-15 22:59 | 田舎 | Comments(0)

30周年に水を差す

大大盛況だったおくがの村30周年。早速そいつに水を差す気はさらさらないが、
思うところがあった。
翌朝、数人で後片づけをした。200人弱も集まれば宴会もわや。強者たちの足跡
は大変なものだった。タプタプんの水っぱらアルコール達が散乱し、色彩豊かな
オードブルの残党共が溢れかえっている。その横で大鍋のおでんの海原には大根
と卵らが所狭しと泳ぎ回っている始末。
これを見ると日本、いや世界の未来は暗いな…と悲観せざるを得ない。
余りに残飲食物が多過ぎる。こんな事が毎日どこかで行われているだろう。
確かに15時開催で、ざっくり200人分の飲み放題&オードブルを注文したから、
その結果である。これでもスタッフ達で5人前ずつは持って帰ったんだが…。
事前の打ち合わせで、オードブルか折弁当か、かなり議論をしたのだが、結局
鶴の一声でオードブルになった。全ては私らのミス。まずは食べ物に申し訳ない。

ただ、出席した大物の方々へも恐れず言うと、出来れば参加者という意識を大切
にして欲しい。「勿体無いからなるべく食べてやろう」とか「残るんであれば、
まぁ家族へ持って帰ってやるか」なんて事を考えて欲しい。また私も酔ってしま
うと、調子に乗って次々にビール栓を開けてしまうのだが、それにも注意しなけ
ればいけない。何か楽しい飲み会が貧乏臭いものになってしまうが、これも慣れ
だと思う。
こんな事言ってたらまたおっさんに怒られそう。
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by ut9atbun61 | 2017-11-01 21:09 | 田舎 | Comments(0)

おくがの村30周年記念イベント

10月28日おくがの村法人設立30周年記念イベントが開催された。
私は20周年、25周年と携わってきて、だいぶ流れが分かってきた。

1部は歴史を振り返ってリレートーク、未来を語るパネルディスカッション。
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残念ながら私はゆっくりと聴くことができず、あたふたと走り回っていた。

というのも、2部の交流会を完全に任されたからだ。
楽しみ2割面倒臭さ8割。その2割を充実させるために、子供をだしに使った。
おくがのリズムセクションのミニライブの後、子供たちを引っ張り出して「
里の秋」と「ふるさと」の合唱。まず大人の心を軽く掴む。
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それから一呼吸おいて、研修生K&子供たちでミニ劇場を開演。
30年前の法人設立メンバーのうち、鬼籍に入ったおっさん達と研修生Kとの夢
の中での交流を仕立ててみた。
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練習の時は、ふざけてばかりで全く様になってなかったが、本番は違った。
気が入ってみんな本気&楽しげに演じている。またそれがそっくり。
まるで天上のおっさん達が乗り移ったかのよう。
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10数年前まで一緒に作業してきた、ひとくせもふたくせもある(今は亡き)
おっさんらを、10年前まだこの世に生を受けてない子供たちは当然知らない。
観ていてちょっと怖いぐらいだった。
そしてそれを食い入るように見て喜んでくれた法人メンバーのじじばばの姿を
見ていると、つながってる感が半端なく、泣きそうになってきた。
キザだけど、人が作っている歴史を身近に感じる瞬間ってこんな時なんだろうか。
大変だったけど良い大会になった!
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by ut9atbun61 | 2017-10-31 21:31 | 田舎 | Comments(0)

おくがの村30周年前夜

明日は農事組合法人おくがの村設立30周年記念イベントが開催される。
この日に向けて、色んな準備に追われ、今日ようやくホッと一息ついた
ところ。
考えてみれば、私がこのおくがの集落に入って16年。その倍の歳月を法
人が生きてきたと言う訳。歴史というのは当人たちの知らぬ間に記され
ていく。設立メンバー12人のうち既に8人は鬼籍に入ってしまった。
1人1人強烈な個性で私の記憶に刻まれている。
明日の2部懇親会では、彼らを呼び覚ますサプライズ企画を準備している。

とにかく、雨もひどくならず、皆が喜んでもらえるようなイベントになれ
ばいいなと願う。
そう言っているうちに日が変わって今日に。
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by ut9atbun61 | 2017-10-28 00:03 | 田舎 | Comments(0)

雑感

明日の台風襲来に備えて、やることはやった。
今は、ほっと休息ついて、やり過ごすのみ。
また明後日からはハードな農作業が待っている。

昨日、我が田んぼの稲刈りが終わった。
今年は、抑草も好調、生育も順調で、有機農家として大分胸を張れるぞ、と
調子に乗っていた。が、稲が熟れ始めてからというもの、毎晩イノシシ親子
が遊びに来る。電柵なんて関係ない。線をかじり、柵を倒す…。極めつけは、
真昼間にウリ坊が田んぼの中でかくれんぼ。私が追っかけ回すも、遊んでく
れていると勘違いして喜ぶ外道!
コンバインから見下ろす田んぼの光景は見るも無残。久々の反収7俵(?)
も夢と終わった様子だ。 それでも来年こそは、と前を向くしかない!

今日は小学校運動会。小雨そぼ降る中、体育館で子供たちは元気いっぱい走
り回る。それを見る私たち親にしたら肌寒い事この上なし!
しかし地域の人たちの暖かい眼は子供たちに届いていることだろう。
木部に住んで良かったと感じられる1日でもあった。

さて、明日はどうなることやら。
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by ut9atbun61 | 2017-09-16 20:58 | 田舎 | Comments(0)

秋の味覚

久しぶりにハミ(マムシ)を捕まえた。
綺麗な状態で斬首したので、そうだ!頂こうと思った。
皮を剥ぎ、内臓をはがして、丁寧に洗う。
子ども達は及び腰ながらも興味津々。
そして晩餉。塩コショウ・刻みニンニク・醤油でもみ込み、米粉をまぶして
ゆっくりと揚げる。
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うん、これはうまそう。訝しがる嫁を尻目にメインディッシュとして食卓中
央に鎮座させる。子供らは「うへぇー」とか言いながら箸でつつくばかり。
「さて、今日の晩飯はこの唐揚げを最低1人1個づつ食べる事!」
宣言したはいいが誰も箸で掴もうとしない。
子供らの茶碗に否応なく1つづつ、何も知らぬ母親に1つ。やっと事に気づ
いて眉をひそめ出した嫁に2つ。残りは全て私の皿に。
各々が恐る恐る口に運ぶ。母親は知らずに口にして、子供らに指摘されてす
こぶる不愉快な表情。嫁子供たちも渋々口に入れ、気持ちわる、などと騒い
でいる。それを眺める私一人、愉快な晩餐を堪能する。つい口も滑らかに。
「皆余り食べないからお父さんが一人でこんなに食べてんだぞ。前に近所の
おっさんが1匹食べて夜眠れなくなったと言ってたけど、お父さんもどうか
なるかもしれないな、ハハハ!」
誰も応える者もなく、代わりに嫁が嫌な顔して顔を背ける。
大丈夫、貴女にはご迷惑を掛けませんよ!と小声で呟いた。
さて、次回はどんな高級食材を食べさせてあげようかな。
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by ut9atbun61 | 2017-09-08 21:45 | 田舎 | Comments(0)

目出度さとは何ぞや?

 9月1日、私は無事に43という数字を数える事が出来た。
人は誰も、齢だけは平等に重ねる事が出来る。
幼い頃は、こんな当たり前の事ですら信じられなかった。

(そうしてるとまたいつものひねくれ節が出てきたのだが)
ところでこの誕生日というやつ、どうもしっくりこない。二十歳までだったらまだ
しも、この齢になってまで「おめでとう」なんて言われるのがどうも嫌だ。単純に
考えると、徐々に死へと向かっていく節目の日であり、身体機能が衰えていくのを
指折り数えていく日に「おめでとう」とはね…。
勿論心から祝ってくれる友人たちには申し訳ない。
ところが、私の頭の中は、年がら年中、御目出度い。
何を言われても前向きに取ってしまうし、到底実現不可能な夢も未だ信じてるし、
自分の運の強さにベタ惚れしてるし(笑)。
だから取り立てて言ってくれなくてもダイジョウブダヨ、と言いたい。

ましてや、フェイスブックをやっていると、フェイスブック側から、「今日は○○
さんの誕生日です。お祝いのメッセージを送りましょう」なんて強迫状が届く。
だから9月1日に、頼みもしない“祝えよ!”というメッセージが友人の間を駆け巡る
かと思えば、私の頭がクラッとしてイラッとする。
私は慌てて誕生日情報を削除した。

こんな事つぶやいていると、横から茶々が入る。
「またそんなこと言って、本当は祝ってほしいくせに。素直じゃないねぇ!」
ここで「そんな事なか!」と声を荒げると思うツボなので、微笑で言葉付け足す。
「祝ってくれるぐらいだったら、お金が欲しいけどね」

やっぱりこんな意見は一般論じゃないのだろう、家族にすら理解してもらえない。
虚しさ胸にこだます、四十路の夜は更けていく…。
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by ut9atbun61 | 2017-09-03 23:17 | 田舎 | Comments(0)