2016年 12月 28日 ( 2 )

第3の男 橘孝三郎

昨日の読書大賞の第3位の紹介。橘孝三郎著『日本愛国革新本義』

私は昭和初期の政治思想に興味があって、色々調べていくと、どうやらその根
っこに“農本主義”というのが横たわっていた。農本主義とは読んで字の如く、
“農業を国の本位(主体)とする”思想のこと。農業立国ならではの在野思想。
そのイデオローグの1人、橘孝三郎氏。紹介はウィキペディアに譲るとして、
彼が農業の傍ら、愛郷塾というのを開いて若者を指導していた。その講義の一
部を収録した本。昭和7年発行の再出版。
時代や題名からして、さぞや国粋万々歳と思うだろうが、意外にそれだけでは
ない。むしろ、現代への警告にも通じる普遍的な視点で物事を捉えている。

「日本の百姓が米を作って自らの米を食へないやうで、どうして国防が保てま
すか。日本の一大事は決して仮想敵国の発展と圧迫によるものではありますま
い。寧ろ敵国外患無き時、国は常に亡ぶるのです。」
「社会は全く金力支配の下に動かされ、人心は大自然を忘れ農本を離れ、ただ
唯物生活を個人主義的に追及して亡び行くのを忘れるに至らざれば止まなくな
るのであります。」
「頭にうららかな太陽を戴き、足大地を離れざる限り人の世は永遠であります。
人間同士同胞として相抱き合ってる限り人の世は平和です。人各々その額に汗
のにじんでをる限り、幸福です。然らば土の勤労生活こそ人生最初の拠り所で
なくて何でせうか。」

この感情論にはぐっとくる。
その一方で、
「今の如き中央至上主義的な集権制の如きは、根本的に改められて地方分権的
なものとなし、これをした国民的共同自治主義の実を挙げしむる~」
と、地方分権を進め、国民自治による決議(下から上への作用)と統治機関に
よる執行(上から下への作用)の両輪で物事を進めていくという現代顔負けの
政策を唱えている。

ただ一つ不気味なのは、「障碍物掃蕩」という項目で、敵は国外にあるのでな
く、内に潜んでいる。それを徹底的に大掃除すると言っている点。
まさに、五・一五事件のバイブルである。

農本主義は、理念として素晴らしかったが、それを実践する手段が悲しいかな
乱暴であった。当時の危機回避の最終手段だったのであろう。
それに対し、現代の農村農業の衰退の危機は異なる要因である。
何かこの理念を活かしつつ、都会人に訴えていく事が出来ないかなと思う。
そのヒントは、もう一人の農本主義者、私の同郷久留米人の権藤成卿翁が握っ
ている! 来年のテーマは権藤氏の「社稷」である。
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by ut9atbun61 | 2016-12-28 23:02 | | Comments(0)

たまたま読書大賞

今年も年の瀬が迫ってまいりました。
さぁ、本年度の『たまたま読書大賞』の時間です!ここでは、たまたま農園主が、
野良仕事を怠けてしまうほど読み込んだという本達を紹介します。
ここ数年、読書量が落ちてきたって事で、今年は月3冊以上というノルマを課し
たところ、7~80冊程読んだようです。
その中から、選りすぐりのベスト10を発表します!

第10位『寝台急行昭和行』 関川夏央
  純文学&鉄道マニアな筆者が想いを滔々と綴った本。昭和を背負った寂しい
  おっさん向けかな。

第9位 『藤澤清造短編集』 西村賢太
  直木賞作家の西村氏のダメダメ男(私)小説が面白かったら、その師匠がい
  たとかで。大正期の最低生活が淡々と描かれてて、プロレタリア系のような
  暗さが無いところが好い。  
第8位 『ヘッセの夜 カミュの朝』 ささめやゆき
  友人からのプレゼント。小説・詩・演劇などを一枚の絵で表現する不思議な
  絵本。3分の1は読んでいたので、独り突っ込みをしながら楽しめた。
第7位 『漱石先生雑記帖』 内田百閒
  大好きな百閒先生のエッセイ。漱石の弟子だと本書を通じて知ったが、百閒
  先生の漱石愛は半端ない。亡くなった後も未練ウジウジと書いているところ
  が笑える。勿論わざとだろうけど…。
第6位 『長谷川如是閑評論集』 
  ジャーナリスト必読書と言われながら、百姓になってようやく手に取った。
  この人は決して時代に迎合せず、右左に傾くことなく、常に自由(自立)主
  義の立場で言いたい放題。社会にユーモア的批判を用いた先駆者じゃないだ
  ろうか。特に惹かれたのは、「(自分の)立場と反対の書を読むようにして
  いる。~反対の立場のものを読む事は私の立場を構成する為に絶対必要だ。」
  今のお偉方は読んだのだろうか?
第5位 『テキヤと社会主義』 猪野健治
  寅さんはマルキストだ、とかねがね思ったいたらこの本。読まずにはいられ
  なかった。アナーキストな香具師(テキヤ)の歴史を取り上げているが、少
  し強引な気もした。けれど、アウトローで底辺に生きる人たちの共通した思
  いは皆同じであって、“粋”という文化に収れんされる。エリートで深刻顔な
  社会主義は崩壊したけど、人間味溢れるいい加減な社会主義はまだある。
第4位 『保守のヒント』 中島岳志
  最近、最も共感できる政治思想を唱える学者。従来の保守主義を紐解いてい
  くうちに、私はゴリゴリの保守主義者だと気付かされた。イデオロギーより
  も人間性を重視する考え方が現実的。
第3位 『日本愛国革新本義』 橘孝三郎
  私の今後のテーマとなる農本主義。そのイデオローグの1人。一人一殺の井
  上日昭の師でもある。無茶苦茶な国粋主義かと思ったら大間違い。本書は昭
  和初期発行でありながら、百姓の立場から堂々と政府・政商を批判している。
  勿論純粋主義なので注意は必要だけど、今見直されるべき思想だと思う。
第2位 『200万都市が有機野菜で自給できるわけ』 吉田太郎
  前からずっと読みたかった本。キューバの有機農業を様々な角度から捉えた
  書。キューバ好きの著者だけに、少し現実を差し引いて読んだが、それでも
  有機農業から世界の諸問題を解決できるかもしれないと期待できる!
第1位 『反〈絆〉論』 中島義道
  ようやく出会った!人生で最も影響を受けたといっても過言ではない。
  人は中島義道氏を「ひねくれ者」というが、私にとっては常識人。“絆”とい
  う美名に潜む圧力をさらけ出している。誤解を招く表現も多いけど、当たり
  前の事を遠慮なく言っているだけ。溜飲を下げるだけの書にはしないつもり。

以上、傾向としてはやや評論系に傾いてしまいましたね。
それにしても、相変わらずマニアックな選書ばかりで…(苦笑)。
ベスト3は改めて詳しく紹介しますよ。
さて、来年は更に読書量を増やしていきたいところですねぇ!
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by ut9atbun61 | 2016-12-28 01:40 | | Comments(0)