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ピロピロ、送り出す

 「かつて、津和野の山奥にピロピロという農園があった。そこではね…。」
と、枕詞を運んできてくれた御二人。
心残りの忘れ物を受け取る暇なく、今日、旅立ったという。
旅人に口無し。今夜は、はな向けの愚辞を言いたい放題だ。

 「津和野町左鐙に面白い人が入っている」と聞きつけて私は出掛けていった。
左鐙の奥の横道のさらに奥。田んぼを右左にかき分け、急こう配を登ったその先。
いつの間にか、天上の下界を見下ろす優越感。そこで、彼らに出会った。
ボーっとしているようで、深く考えているような、言葉を介さなくても生きていけそうな、
素敵な佇まい。私の人種系統とはかけ離れているだけに、すぐに魅かれた。自然栽
培というゆるさも気に入った。
 それから頻繁に会う訳でもなし、噂を耳にするでもなし。目立たぬから余計に気に
なる。私の頭のどっかには、決まって彼らに占有された箇所があり、そこから脳髄に、
モルヒネよろしくじわじわと沁みていく。
年に数回、彼らに会いたくなってくる。(失礼を承知で言うと、ご近所さんだったら神秘
性と面白みが半減して、ここまで至らなかったかもしれない)

ある時、彼が信じる精神世界観を聴いた。大体この手の話を聴くと、すぐに茶化して、
場を乱しまう悪い癖が私にはあるので自制してたのだが、彼の語り口には全く降参し
てしまった。
彼自身が、初めっから笑いを堪えながら、にやけて語る。冗談か本気か判別がつか
ない程に。それで私の冗談も全て空振り。
拍子抜けと同時に、思った。おそらく私のいい加減さ、胡散臭さを彼も少なからず持っ
ているから気が合うのだろう。何しろ1970年代の社会観が共有できるのだから。
それを失わない限り、一本道を突き進むことにはならないし。でも実のところ、そこまで
見越して語っているのであれば…。
自分自身の世界観を確立させようと静かなる野望を感じた。
冗談にも空恐ろしさを持ってる奴だ。

今後彼らは、コミューンという21世紀、いや22世紀の怪物をてなづけようと模索していく。
意外と身近で現実的な取り組みを始めるという。
他人事ながら私にゾクゾクさせてくれそうだ。しかし他人事で済ませてはいけない。
それをつまみにして、こっちでも愉しめる段取りをしなければ。それが彼らとようやく繋がれ
る日がやってくるという訳だ。
その時にはまたこのブログにご登場願おう。
 彼らの足跡がまだここにある。まだ温もりが残っているので、ゆっくり体感されたし。
ピロピロ、さようなら!
by ut9atbun61 | 2013-01-27 23:29 | 農業(有機)
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