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私が農業を始めたワケ ~棚田~その2 

 「棚田を耕すと言っても…」と思い悩みながら飛び込んだ田舎。
しかし周りを見渡しても棚田なんか殆ど無い…。
 それもそのはず、私の研修先奥ヶ野集落は所謂、農業先進地。
師匠である糸賀のオッサンは集落営農の達人であるが故、「田んぼ荒らすな」を合言
葉に奮闘。早くより圃場整備(つまり小さな田んぼをまとめて大きな一枚にする)を行い、
作業し易い地盤を作った。正直言って私はそれが不満。それを率直にぶつけてみたとこ
ろ、一喝。
「お前が棚田でやれるもんか。ただでさえ大変な米作りなのに。」
 くそっ、と思った。よし!じゃ、まず普通の田んぼでやってやろうじゃないか。
そして初年度、(たかだか1反の田を)手植え、除草、手刈り、はぜ干しにチャレンジ。
気の遠くなるような作業の毎日。周りから冷やかされて、家族から匙を投げられて、
ようやく……終わった。惨憺たる結果。
その時は、だらず者の私に見返すほどの自信とエネルギーが残っていなかった。
 以来、柿ノ木の大井谷の棚田を眺めては、溜飲を下げるに留めていた。

 しかし、最近になって、近所に唯一残っていた棚田が圃場整備で姿を消した事が、
私の気持ちに再び火を付けた。学生時代大見得切って「やる」と言った棚田を何とか! 
TPPや農業への企業参入が叫ばれている今、そんな非効率の代名詞を熱く語るは無に
等しいのかもしれないが、黙ってはいられない。
 
 棚田ほど、自然の理に叶っている農業はなく、
 棚田ほど、人々を魅了させる風景はない。
 棚田無くして、国滅ぶ

 私が学生時代のゼミで、食糧問題に取り組んだ結論は、2025年以降に資源と食糧の
争奪戦が始まる(その考えも農業を始めるきっかけの一つだった)というもの。
化石燃料の枯渇と気候変動による水と食料の不足は島国日本にとっては存亡の危機。
 そうなれば、トラクターもコンバイン等機械は全て動かせなくなるかもしれない。ましてや
異常気象で降水量が減ってしまえば、整備された田んぼへ果たして水がいくのか…?
効率化農業の終焉の時代は必ずやってくる。
 そう言うと皆は一笑に付すのだが、私は大真面目で信じている。
そうならないためにも、棚田を残さなければならない。

 実は家の上の造林地は元は棚田。今からゆっくりじっくりかけて、杉を伐採して、近い将
来棚田を復活させるのが、私の密かな目標である。


 久々に熱々の文章を書いてしまったが、これも独りのんびりできるため。
子ども連れて里帰りしたカミさんに感謝しながら、一カ月間羽根を伸ばすつもり。
by ut9atbun61 | 2012-02-09 23:15 | 農業(有機)
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